第79話 王都観光



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「お、おはようございます、ソーマ様!」


「おはようございます、カロリーヌさん。お待たせしてすみません」


「と、とんでもありません。私も今来たばかりです!」


 ……なんか新鮮だな。まるでデートの待ち合わせみたいだ。いや、デートなんてしたことないけど。


「さあ、ソーマ。はやく買い物に行くとしよう!」


「ああ、明日には王都を出るんだからな!」


「いろいろと買い物をしないとだめ!」


「えっ、あっ、うん。そうだね」


 別にみんな焦る必要はないんだけどな。




「水と食料はティアさんや御者のポーラさんとイレイさんが準備してくれたから、今日はゆっくりと王都を回りながらお土産でも買っていこうか」


 明日王都を出ることはみんなには伝えてある。馬車の旅路に必要となる水や食料はすでに準備してくれていた。今日は1日のんびりと過ごす予定だ。


「カロリーヌ様やソーマ様には指一本触れさせません!」


 今日は騎士団のカミラさんも俺やカロリーヌさんの護衛として同行してくれる。他にも騎士団の人が5人ほどいるので、結構な大所帯だ。


 どうやら前回洗脳された子供の暗殺者から俺を守れなかったことに対するお咎めはなかったようだ。まあ、あんなの防ぎようがなかったもんな。


 俺を守ろうと張り切ってくれているのはいいんだけれど、そもそも最終日に襲われるとかは勘弁してほしい……


「さすがにこの集団に手を出してくる相手はいないと思うけれどね」


 カミラさんを合わせて6人の鎧を身に付けた騎士達と、防具を身に付けた高ランク冒険者のエルミー達。そしてその中心にいる俺とカロリーヌさん。さすがに今日はドレスではなく、外行き用の服だが、それでもいいところのお嬢様であることはわかる。


 目立つことは目立つが、逆にここまであからさまに貴族を護衛していると見せつければ、手を出してくる輩は出てこないかもしれない。


 あとは前回子供に刺された時みたいに俺が警戒を怠って、ノコノコひとりで出ていかなければ、たぶん大丈夫だろう。




「おお、これはアニックの街では見たことのない調味料だ。よし、こっちも買っていこう!」


 まずは市場へやってきて個人的な買い物をしている。異世界の街で香辛料や調味料を購入してテンションが上がっている男子高校生がいるんだってよ!


 ……ごめん、俺です。だって最近は完全に料理が趣味になっているからな。この世界だと娯楽のようなものが全然ないから、自然と料理に時間をかけることが多くなってしまう。それにこっちの世界の食材で元の世界の料理を再現するのって結構面白いんだよね。


「ソーマ様は料理をご自分でなさるのですね」


「ええ。結構面白いんですよ」


 こちらの世界では男性が料理をするのは普通だが、貴族や治療士のような者がわざわざ自分で料理するというのは少し変わっているのだろう。


「ソーマの料理はとても美味しい」


「ああ、それに見たことがない料理を作ってくれるんだぜ」


「……えっと、みなさんはソーマ様が作った料理を召し上がっているのですか?」


「ああ、私達は料理ができないからな。ソーマには申し訳ないのだが、毎日ご飯を作ってもらっている」


「毎日ですか!?」


「えっと、エルミー達はAランク冒険者なんですよ。今は俺を護衛してくれているエルミー達のパーティハウスにお世話になっています」


「そ、そういうことでしたか!」


 まあ普通に考えたら女性3人の家に、男の俺が泊めてもらっているのはまずいんだけどな。とはいえ、3人とも紳士……ではなく淑女なので一向に手を出してくれない。こっちはまったくもって手を出してくれて構わないのに……




「市場を回ってお土産もたくさん買ったし、個人的な買い物もいっぱいできたね」


「ああ。あまり王都に来ないから、つい買いすぎてしまうな」


 そのあとも市場を回って、冒険者ギルドマスターのターリアさんやポーション屋のユージャさん、治療所を手伝ってくれる職員や孤児院のみんな、マーヴィンさんにドルディアさん達、普段お世話になっている人達へ王都のお土産をたくさん買った。


 お昼はカロリーヌさんの案内で王都で有名な料理屋さんへ行き、とても美味しい昼食を食べた。貴族達の間でとても有名なお店らしく、高級宿で出てきた食事と同じくらい美味しかった。


 普段自分で作る料理もいいのだが、王都で食べる高級料理もやっぱりいいな。高級宿や昨日の国王様との食事会に出ていた料理もとても美味しかったし、たぶん王都に来てから太った気もする……


「鍛冶屋にも寄ってもらって悪かったな、ソーマ」


「ソーマ、魔道具屋も寄ってくれてありがとう」


「いやいや、俺もすごい楽しめたよ」


 お昼のあとはエルミーやフェリスの行きたかった王都で有名な鍛冶屋や、フロラの行きたかった魔道具屋にも寄ってみた。


 こちらの世界の男なら興味はないかもしれないが、俺にとっては興味しかなかったぞ。俺が実際に武器を持って戦うなんてことはないと思うが、武器や防具や魔道具は見ているだけでテンションがかなり上がるよね。


「それじゃあ最後に孤児院を回っていこうか」

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