第75話 ジョナルド卿
「なるほど……別の世界、
さすがの国王様もいろいろとお腹いっぱいのようだ。俺でも逆の立場だったらどうすればいいのかわからなくなるだろうな。
「隠していてすみませんでした。実は護衛であるエルミー達にも言うタイミングを逃してしまっていて、さっき教えたばかりなんです」
今思うと、エルミー達には異世界からこの世界に来たことを話した時に聖男の話をしても良かったと思うが、完全に話すタイミングを逃していた。
国王様に伝える前にエルミー達には聖男のことを話したが、3人とも特に気にした様子はなかったように見えた。とはいえ3人にはずっと隠し事をしていて申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
これでもうみんなには隠し事はないからな。……あとはパーティハウスにいる時に薄着で無防備な3人をチラチラと横目で見てしまうことくらいしか隠していることはないぞ。
「ソーマ殿が秘密にしていたのも当然であると思うぞ。いきなり別の世界にやってきて、特別なジョブというものを授かれば、誰でも慎重にもなるというものだ」
異世界に来てしまったことは割と早めに話したんだよな。
「もしかしてそのジョナルド卿というおかたもソーマ殿と同郷であったりするのだろうか?」
そう、それについては少し俺も考えた。もしかしたらこのジョナルド卿という人は俺と同じ異世界から来た可能性もある。
「いえ、今のところは分からないですね。ですがこの方は今のポーションの基礎を築いた人でもあると記載されておりました」
「ほう、それは素晴らしいおかたであったのだな!」
俺もユージャさんとポーションの研究をしていたから、今のポーションがどのような素材を元に作られているかは知っている。どうやらこの人はその大元を作った人らしい。
しかし、それだけでは別の世界からやってきたのかはわからない。もしも現代日本とかからやってきていたら、もっといろんな文化を発展させていたとも思うんだよな。
いや、パンの酵母液の作り方とか、元の世界のいろんな技術とかは異世界ものの小説とかを読んでないと、普通の人は知らないだろうし。とりあえず今回見つけた伝記にはジョナルド卿の功績などしか載っていなかった。
「今度はこのジョナルド卿という人物について調べてみたいと思います。今日はもう遅いので、明日もう一度書物庫を調べさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「ああ、もちろんである。ソーマ殿の気の済むまで王都にいてほしい。……というよりも、できればこのまま王都に住んでほしいと思うがな」
「男巫であるデーヴァさんも回復しましたし、王都までそこまで遠いというわけでもありませんから。定期的に王都に来ても良いですし、大病を患った人がいたら、ご連絡をいただければと思います」
当然そういう流れになるとは思ったが、王都にはデーヴァさんもいるし、病人を治すために定期的に王都を訪れてみてもいいだろう。
「……ふむ、それは残念であるな。だが先程も言ったようにソーマ殿の希望はできる限り尊重すると誓おう。何かあればなんでも気軽に言ってほしい。その代わりにどんな理由であろうと他の国にいく場合には、
……先程よりも圧を感じる。今や男巫よりも上位の聖男であることを伝えたからな。万が一にも他の国に移住したいなんて言ったら、どんな手段を使っても止めるという意思表示であろう。
「はい、旅行であれ何であれ、他国に行く時は必ずご連絡させていただきます。あの街の人達には本当にお世話になっていますから、拠点を移す気はありませんし、少なくとも自分の意思を尊重していただける限り、この国のために尽くすと誓います」
こちらも国王様が一番安心することを伝えておこう。あの街の人達には本当にお世話になっているし、俺の意思を尊重してくれるこの国王様には、俺もできる限りのことをしてあげたい。
別の国だったら、戦闘能力のない俺を力尽くでどうにかしようと考えてもおかしくはないからな。
「それは何よりである! ソーマ殿、この度はデーヴァ殿を治していただき本当に感謝している。デーヴァ殿も直接お礼を伝えたいと思うので、明日ぜひともデーヴァ殿と会ってほしい」
「ええ。俺もデーヴァさんとは話してみたかったので、明日またお邪魔させていただきますね」
とりあえず俺の事情は理解してもらえたようだ。まあ国王様からしたら、今日起きた出来事を消化するのに少し時間も必要だろうな。
「ソーマ、大丈夫だったか?」
「うん。特に問題はなかったよ。もうだいぶ遅くなったし、ティアさん達も心配していると思うから、一度宿に戻ろう」
今日も昨日に引き続き、いろんなことがあった。書物庫を調べる際に、宿には一度連絡を入れてもらったが、こんなに遅くなってしまって、ティアさん達もだいぶ心配しているだろう。
それに俺も国王様と話したり、たくさんの本を読んだりと、とても疲れている。一度宿でゆっくり休むとしよう。
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