第3話 何この異世界?
「オラ、痛い目見たくなきゃ、さっさと男と金目の物を置いていけ!」
「ふざけたことを抜かすな! 俺は男を無理やり手込めにしようとするオメーらみてえなやつらが一番嫌いなんだよ!」
「フェリスに同意。盗賊に生きる価値なし!」
ええっと、こんな状況なんだが整理しよう。あの女盗賊達の狙いは男。男の服を溶かすスライムに、男を襲うメスゴブリン、男騎士の天敵であるメスオーク……
何だよそれ! こんな世界嫌すぎる! なんで男の俺の貞操が狙われなきゃいけねえんだよ! 神様、頼むから元の世界に戻してくれ!!
「へっへ、あの男、俺達にビビッた顔して可愛いじゃねえか」
「たまんねえなあ、早く俺の股を舐めさせてえぜ!」
あ、あっちの女盗賊の2人は上の服を着ていなくて上半身裸だ。そういえば元の世界でも上半身裸の盗賊とかいるもんな。……案外この世界も悪くないかも。
「ソーマ、安心しろ。君には指一本触れさせはしない!」
……本当にすみません。女盗賊の胸をガン見していたとは死んでも言えない。
「フェリスはソーマから離れるな。フロラは私の援護を頼む!」
「「了解!」」
「おいおい、まさかたったの3人で戦うつもりかよ! この人数差が分からねえのか?」
「お、お頭! ちょっと待ってください、こいつらもしかして!」
「ああん、どうした?」
「……いくぞ!」
「はあ!?」
エルミーさんがロングソードを中段に構える。そして構えた瞬間に
「がはっ!」
「ぐわっ!」
そして女盗賊の2人が一瞬で後ろの大岩に叩きつけられた。
「な、何だ、何が起きた!?」
「ぐえっ!」
「ぎゃあ!」
俺もそうだが、女盗賊のお頭も俺と同じで状況がまったく把握できていない。
「相変わらずエルミーは速すぎ。こっちもいくよ、バインド!」
「なっ!?」
「何じゃこりゃ!?」
フロラが杖をかざすと残りの女盗賊達4人の足元から鎖が突如として現れ、女盗賊達をグルグル巻きにして拘束した。
「くそったれ! なんだよ、ひとりはアホみてえに動きが速いし、こんな強力な拘束魔法を使えるなんてふざけてんのか!」
「あの人間離れした身体能力に、詠唱破棄しているにもかかわらず4人もの人間を一瞬にして拘束する魔法、大楯を持った大柄な女……お頭、やっぱりこいつらAランク冒険者パーティの『蒼き
「なに! Aランク冒険者パーティだと! 馬鹿野郎、もっと早く気付け!」
「お頭だって気付かなかったくせに!」
一瞬のうちに4人が気絶し、4人が魔法でできた鎖で拘束された。
「なんだよ、俺の出番はまったくねえじゃん!?」
そして唯一何もしていない……というより女盗賊が何かをする前に戦闘が終わってしまったため見せ場がなかったフェリス。ちゃんと俺の前に出て俺を守ろうとしてくれたことはちゃんと見ていた。
「ふう、終わったな。それじゃあこいつらを拘束して街の憲兵に引き渡そう」
「3人とも物凄く強いんだ。ありがとう、また助けてもらっちゃったね」
女盗賊達がエルミー達はAランク冒険者パーティだと言っていた。この世界のAランク冒険者がどれほどいるのかは分からないが、少なくとも相当な実力者であることは間違いない。
「気にするな。私達だけだったらこいつらは襲ってこなかったかもしれない。ソーマがいてくれたおかげで盗賊達を捕まえられたんだ、こちらこそ礼を言おう」
「ソーマはいいエサだった」
「おいフロラ! そういうことは正直に言うな」
まあ囮として役に立てたのなら何よりだ。女盗賊達を捕まえられたおかげで、この道を通る男の人が襲われることがなくなったらそれはいいことだろう。……なんかまだ男が襲われるということに違和感があるな。
「俺もみんなの役に立てたならよかったよ」
できる限りの笑顔で応える。スライムに引き続き盗賊からも助けてもらったし、この人達にはお世話になりっぱなしだ。
「なあ、やっぱりこの子って……」
「……ああ、物凄い天然だな。可愛い顔もしているし、街でいろんな女に声を掛けられるだろうな」
「……天然オレっ子、尊すぎる」
「ちょっと心配ではあるな……」
何やら3人が小声で話している。知らないうちに何かおかしなことを言ってしまったのかな。
そのあとは盗賊達を縄で拘束しつつ、盗賊達をフェリスが引っ張りながら道を歩いていく。
街に着くまでの間に3人にこの世界のいろんなことを聞いてみた。どうやらこの世界では男女の比率が1:3ほどになっており、そもそも男性の割合が少ないらしい。さらに生まれつきの力や魔力は男性よりも女性の方が強い。
その結果、自然と危険が多い冒険者や、貴族などの有力者は女性ばかりになっていったようだ。男性の仕事は接客や事務、料理や掃除などといった力を使わない仕事が多いらしい。
まさしく元の世界の男性と女性の役割が入れ替わっている世界だ。それに合わせて男性は肌をあまり女性には見せないようにし、お淑やかな性格が好まれるらしい。
……俺はこんな世界で生きていくことができるのだろうか?
「さあ見えてきたぞ! ソーマ、アニックの街へようこそ!」
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