アネモネの花言葉

しらす丼

本編

『薄れゆく希望』

 君を知ったあの日から、心に芽生えた感情がある。


 一緒に過ごしていた時間は、いつも楽しくて幸せで。心がいつも跳ね上がっていたっけ。


 あ……ここからもアネモネの咲いている花壇が見えるよ。


 やっぱりアネモネって春の花なんだ。花壇の隅々までたくさん咲いてるよ。


 そうだ、アネモネといえば!


 君にアネモネのしおりを贈ったね。確か……紫のアネモネが描かれていたはず。


 君は今も大事にしてくれているのかな。

 あのしおりに込めた想いをちゃんと受け取ってくれたかな。


 ま、そんなことを思っても、君にこの想いが届くわけじゃないんだけどさ。


 ――それにしても。ずっと窓の外を見ながらこんな独り言を言うなんて、なんだか寂しいよ。


 でも、仕方がないんだよね。あの日、あの時……この人生は狂ってしまったのだから。


 君をずっと愛していたかった。そばにいたかった。


 けれど、それは――もう叶わない。

 いや。そもそも叶うはずもなかったんだ。


 だって出会った時から始まっていた、『薄れゆく希望』だったんだもの。




 そうこれは、優しく美しい愛の囁きなどではない。


 儚く苦しい恋の物語なのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る