17 ランクアップ
<レベルアップしました! 114→115>
<能力値:99ポイントを割り振ってください>
危険度A~Sのグリーンドラゴンを討伐していたら、レベルが上がった。
能力値の割り振りは、細かく計算するのが面倒になったので、筋力、敏捷力、耐久力、判断力を上から同じ数字になるように順番に振る方針に変えた。
最初は2000を目指し、今は2500を目指している。
現在、こんな感じだ。
+++
名前:デガ
種族:ヒューマン
レベル:115
年齢:18
筋力:2500
敏捷力:2500
耐久力:2500
知力:1130
判断力:2371
魅力:339
特殊能力:ダイス目操作 レベル3
+++
数字は増えたが、相変わらず実感には乏しい。
危険度が個体によってAからSにまでブレるグリーンドラゴンを相手に、あえてダイスチートを使わず突っ込んで急所に素手の一撃で仕留められるから、強くはなっているのだろうけど。
ダイスチートもレベル3に上がり、他人のダイス目にも干渉できるようになった。
今のところ役に立った場面を目にしたことは無いが、「僕と僕の仲間に対し攻撃や悪意を向けるダイスロールは自動でファンブル(大失敗)する」という設定にしてあるお陰か、ドルズブラからの刺客のような不届き者は全く現れなくなった。
僕とベルはともかく、カイトとチャバさんは戦闘能力皆無の一般人だ。危険が少なくなるに越したことはない。
「もう危険度Sでも余裕ですね」
ベルが、グリーンドラゴンを殴った僕の右手を取って観察し、安心したようにきゅっと握りしめた。
以前は握手で嫌そうにしていたのに、最近ベルの方から僕に触れることが多い。
僕を仲間として、冒険者として、認めてくれたのかな。
「今ので最後のグリーンドラゴンだったね。ルートして、帰ろうか」
「はい」
グリーンドラゴンからは竜の角、竜の牙、それにグリーンジュエルという宝玉が出た。宝玉は大きさや純度によって価値が一万マグから一千万マグ以上と、危険度よりもブレがある。
今回倒した三十匹から出たグリーンジュエル三十個のうち、大きくて澄んでいるのが五個ほどある。
五つ全て一千万の査定が出たとしても、蘇生費用一人分の半分だ。
冒険者としてハイペースで稼げているとはいえ、残り約一億五千万マグ。
五千万かもしれないアイテムを握りしめても、まだ足りないと普通に考えてしまう。金銭感覚が麻痺している自覚はある。
「どうしました、デガさん?」
ルートをしていたベルに声を掛けられてはっとする。
「ちょっと考えごとしてた」
「お疲れなのでは。明日は休みましょう。カイトさんもお休みのはずですし」
「うん」
チートでステータスが上がりまくっているのは僕だけではない。一緒に行動しているベルも、僕のダイスチートの効果で、強くなっている。
二人して休みなく魔物を討伐し続けていても、体力的には全く疲れていない。
それでもやはり人間だから、定期的な休息は必要だ。
大抵、カイトの休日に合わせている。
しかし、翌日に休むことは叶わなかった。
ギルド長に呼び出されたのだ。
「まずは、冒険者ランク昇格を認める。デガ、ミヒャエル嬢。ふたりとも、今からランクSだ」
「ありがとうございます」
僕とベル、揃って礼を口にする。言われてその場で冒険者カードを出すと、ギルド長自らカードの情報を更新してくれた。
「あの、用件って……」
冒険者ランクの更新だけなら、わざわざ冒険者ギルドの建物の一番奥の部屋でやることはない。
何なら昨日、仕事完了手続きのついでに受付で行うこともできたはずだ。
僕とベルが訝しんでいると、ギルド長が重たいため息をついた。
「それがな、ドルズブラから正式に要請が来たのだ」
「要請?」
「冒険者ギルド所属の『デガ』という名の冒険者に、魔王討伐の依頼だ」
ドルズブラは魔王討伐を諦めていなかった。
その上で、国として正式にギルドへ仕事を依頼したのだ。
「ドルズブラの命令を聞かねばならない理由はありますか?」
隣のベルがこめかみに青筋を立てながら、ギルド長を問い詰める。
「先日の刺客の件もあるからな、何度か突っぱねたのだが……しつこい上に、言うことを聞かねば町を封鎖すると言い出した」
「町を封鎖って、そんなことできるのですか?」
僕たちがいる町はレトナークという国の領地だが、王城はドルズブラが一番近い。
「おそらく、兵で町を囲って人や物流を止めるという意味だろう。あの国ならやりかねん。レトナーク国軍に助けを求めても、応援がくるまでの間、混乱必至だ。最悪、国同士の争いに発展するやもしれん」
ベルが「ぐぬぬ」と唇を噛む。
僕も片手でこめかみを押さえた。
「どうしてそこまでして……」
倒しても意味のない魔王を倒したところで、ドルズブラが世界征服を達成できるとは思えない。
「わからん。わからんが……報酬を出すと言っている」
僕とベルは同時に顔を上げた。
「魔王一匹につき、二千五百万マグだそうだ」
「安っす!」
「安すぎますね」
魔王は全部で四匹いる。全員倒しても、一人分の蘇生費用にしかならないじゃないか。
「全くだ。舐めているとしか思えない。だが、これはもうやってもらうしか無いのだ」
ギルド長は苦渋に満ちた表情をしている。
町の平和が掛かっているのでは、僕に行かせる他ないのだろう。
「魔王を倒したという証拠は、どうすれば」
「魔王の角を折って持ち帰ってきてくれ」
「わかりました。行きます」
「デガさんっ!?」
「すまない。できる限り支援はする」
反対するベルをどうにか押し留めて、僕とギルド長で魔王討伐の具体的な行動を決めた。
「どうして請けたのですか!?」
家に帰り着くなり、ベルに猛抗議された。
「町を危険に晒したら、カイトやチャバさん、地下で寝てるピヨラとジョーも危ない。それに二匹倒せば一人蘇生できるし」
例のグリーンジュエルは全部で約四千万マグだったが、これまでの稼ぎで蘇生用の貯金は計五千万マグ貯まった。
「ですが……」
「僕だってドルズブラの言いなりにはなりたくないよ」
僕が魔王討伐へ出かけている間に、ギルド長がレトナーク国軍へ支援要請をすることになっている。
ドルズブラは小国だ。レトナーク国軍が牽制すれば、もう何もできない。
魔王討伐へ行くとは言ったが、魔王を本当に討伐するとは言ってない。
まぁ、お金は欲しいから、倒せそうなら倒すけど。
「デガさん、蘇生に必要な聖石の材料は何か、覚えていますか?」
突然の問題に、僕は記憶を掘り起こした。
「確か、危険度SS以上の魔物から出る、魔核十個だっけ」
「魔王を討伐できるのであれば、危険度SS以上の魔物だって討伐できます。お金稼ぎに拘らなくてもいいのですよ?」
「あ、そっか」
魔王は危険度SSS以上とされている。
ギルド長は僕のステータスを知っているからナチュラルに魔王討伐を任せてくれたが、よく考えたら蘇生に必要なアイテムを自力で入手することもできるんだ。
まだ冒険者ランクはSになったばかりだから、SSSどころかSSの仕事も請けられないが、自主的に魔物を討伐するのは問題ない。
「あれ、じゃあ魔王を倒したら魔核出る?」
「魔王は基本的にアイテムを落としません」
ベルはむくれながらも、教えてくれた。
「何騒いでるのー? 痴話喧嘩?」
玄関先で話し込んでいたら、チャバさんが雑巾片手に現れた。まだ昼を少し過ぎた頃だから、掃除中だったのだろう。
「ちちち痴話喧嘩だなんてそんなっ」
「違うよ。明日、魔王を倒しに行ってくるから、その件でちょっとね」
「ふーん。……魔王を倒しに行く!? なっ、それ、危なくないの!?」
「そう、危険なんですよ! チャバさんからもデガさんを止めてくださいっ!」
「おーい何の騒ぎだ?」
カイトまで出てきてしまった。
リビングでカイトが作ったお菓子を頂きながら、事情説明することになった。
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