ラのヨンジュウヨン「兄貴の威厳」
──ドゴォオオオンッ!
「ひぃっ!?」
不意な爆発に、強面の男は驚いて飛び上がってしまう。反動でクラクションに手が当たり、『プッ』と音を鳴らしてしまったのは不可抗力である。
それは、誰にも想像が付かない。
こんな爆発がまさか起こるなんて──。
「……チッ!」
しかし、サングラスの男はそんな大事故にも動じずに舌打ちをする。
「あっ、すみません」
自分のクラクションが原因ではないかと勘繰った強面の男が平謝りをする。
「ちゃうわい! あいつらや……」
そう言って、サングラスの男は雑居ビルを睨んだ。
「好き放題しくさって……やってくれるやないか」
ドアに手を掛け──何を思ったか、サングラスの男は車外に出ようとし始める。
「危ないですよ!」
兄貴分の身を案じた強面の男が、サングラスの男の腕を掴む。
「おどれ、何しとるんや!」
「また爆発が起こるかもしれないじゃないですか……」
「ビビリ過ぎや! もう爆発せんから大丈夫やろ」
「そ、そんな……。分からないでしょう?」
「うるさいわ! いいから、離さんかい!」
サングラスの男は強面の男の腕を払い除けると、ドアを開けて外へと出た。
「爆発? ふんっ。そんなん、もうせんやろ」
ポケットから煙草を取り出したサングラスの男はライターで火をつけると、煙を吹かしたのであった。
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