君がくれた翼 ~君と過ごした1年間の物語~

たなかし

プロローグ 夢を乗せて大空へ

『本日はエアーフランス205便をご利用くださいまして誠にありがとうございます。パリ、シャルル・ド・ゴール空港までの飛行時間はおよそ13時間50分を予定しております。当機の機長は――――』


 飛行機が離陸すると、俺はバッグから顔を覗かせる手紙を見つめながら、君と初めて会ったときの1コマを思い出していた。

 窓を覗くと、すでに街は小さい。それも雲の隙間からかろうじて見える程度。ふと隣に目をやるともう寝ている。こんなにすぐ寝るなんてと、その金髪の後ろ姿を見て少し笑ってしまう。


「ふぅ、さすがに暑いな」


 真夏にも関わらず首に巻いたマフラーを少し緩める。

 それにしてもまさか自分がここに座っているなんて、あの頃からすると全く考えられなかった。


 ――――あの頃。そう、君と出会ったあの冬。

 あれからもう1年半以上か――――初めて君に会ったあの日。その日は確か、風花かざはなの舞うとても寒い日だった。

 ずっと孤独の中にいた俺。周りを見ることを拒んでいた俺。自分の存在意義を見失っていた俺。君と過ごした時間は真っ暗だった俺の世界を色鮮やかに染めた。

 俺の人生を大きく変えた君との1年間の物語。そして今俺は君を、みんなを乗せて空へと羽ばたく。

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