第4話
「来週に引っ越し!?」
僕は驚いて声を張り上げた。
「そうだ。また転勤だ」
夕食を食べ終わった後、お父さんから話があると言われて引っ越しの話を聞かされた。
「せっかくこっちの生活にも慣れてきたのに。またすまないな」と言われた。お母さんは「お仕事だから。仕方ないのよ」と僕を宥めた。
なんでだよ。せっかく友達もできたのに。仕方ないで済ませられないよ
夕食に食べたものが消化されていないのか、僕のお腹がグルルと唸った。
その日の夜、僕は考えた。引っ越しのこと、奏との交換ノートが続けられないこと、必死に考えた。交換ノートが続けられないなら郵便はどうだろうか。お小遣いに限りがあるから毎日はできないけれど。それしか奏と話す方法がない。
頭の中でシミュレーションが転がり続ける。ベッドで横になっているが眠れない。熱くなった脳はなかなか冷めなかった。
そして翌日の朝、僕は体調を崩していた。
お医者さんは流行りの風邪だから一週間は絶対安静だといった。
それって引っ越しの日まで家の外に出られないじゃないか。なんとか山の拠点に行く方法はないかと思うも、高熱で頭がクラクラして思考が纏まらない。時間が経つにつれて考える気力が蝕まれていった。
結局引っ越しの日まで熱が下がらず、僕は床に就き泥のように眠っていた。
引っ越し当日、朦朧とした意識で新居へ向かう車に乗る。
奏に別れを告げることはできなかった。
もうなんの希望もない。このまま消えてしまいたいよ。
熱が引いたのは新居へ引っ越してから二日後だった。
何日も寝たきりだった僕は生活リズムが狂い、深夜に目を覚ました。
長い夢を見ていた気分だ。奏との交換ノートが遥か遠い記憶に感じる。
新居の化学物質の匂いが僕の脳を刺激する。また新しい学校か。億劫だ。
嫌な現実から逃げたくて、目を瞑り再び眠りに落ちようとする。
ふとカーテンの隙間から光が入ってくるのが見えた。
カーテンを開けると、夜空に無数のオレンジ色の星が宝石を散りばめたかのように広がっていた。
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