羽根散る妖精


 アゲハの羽根が千切れて飛ぶ。

 それでも君は行く。

 幾星霜の時を超え。

 端から端まで飛んで行く。

 羽根散らす妖精。

 彼女はただ彼に会いたくて。

 悲恋と呼ぶには哀しすぎて。

 喜劇と呼ぶには悪し様で。

 これはきっと君の物語。

 君だけの物語。

 だれだって胸の中に飼う妖精。

 羽根を千切りながら飛ぶ。

 恋に焦がれて己の身を焼く。

 その時まで。

 足が最後の一本になるまで。

 心の妖精は飛び続けるのです。

 せめてその光景が。

 それを見た人が。

 美しかった。

 そう思ってくれるように。

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