第145話 バグじゃないよね(海竜:リバイアタン)
第三章 世界樹の国と元勇者(145)
(アマレパークス編)
145.バグじゃないよね(海竜:リバイアタン)
「聖薬草・・・ちょうだい。」
首長竜(っぽい生き物)の子供は、苦しそうに喘ぎながらも、その長い首を起こして、僕に訴えてきた。
僕は聖薬草を持った右手を彼女(たぶん彼女のはず)の口元へ差し出す。
彼女は聖薬草を束のまま咥えると、ムシャムシャと咀嚼し始めた。
「あの〜、鑑定かけてもいいかな?」
僕は首長竜っぽい子供にそう尋ねた。
いつもは魔物に対しては問答無用で魔物鑑定をかけるんだけど、言葉を解する相手の場合、一応礼儀を通したほうがいい気がしたので。
彼女は聖薬草をムシャムシャしながら小さく頷いた。
「鑑定。」
そう呟くとすぐに鑑定結果が表示された。
○「リバイアタン」: 海竜(幼体) ☆☆☆
体型 : 小型
体色 : 青色
食性 : 魚貝食・魔素食
生息地: 海
特徴 : 主に魚貝(海の魔物含む)を食べる。
魔素を吸収することも可能。
成体になると巨大化する。
咆哮に威圧効果がある。
水系統のブレスを吐く。
魔法耐性が高い。
水流を操る。
人の姿になれる。
言葉を喋ることができる。
遭遇したら逃げる事をお勧めする。
可食(超絶美味)。
特技 : 咆哮・ブレス(水)・魔法耐性(大)・水流操作・
人化・言語
ええっと、普通の魔物鑑定と表示が少し違う。
最初の鉤括弧で表示されてるのは個体名だろうか?
名持ち(ネームド)ってことかな。
「リバイアタン」?
リバイアサンじゃないのか。
海竜で有名なのはリバイアサンだよね。
発音の仕方の問題かな。
表記のバグじゃないよね?
種類がリバイアサン(海竜)で、名前がリバイアタン?
なんかスッキリしないけど誰も答えてくれないので鑑定内容を吟味することにした。
星の数はっと、あっ、従魔たち以外で初めての星3つだ。
この子、弱々しく見えるけどかなり強いんだね。
種族が「海竜」になってるけど、やっぱり竜種は強いんだろうな。
竜種の上に龍種とかもいるのかな?
上位種、たぶんいるんだろうな。
気になるところは・・・
『食生』に『魔素食』ってあるけど、『魔素』って魔力の構成要素っぽいものかな?
空気中とか海中とかに『魔素』が存在していて、それを自分のエネルギーとして取り込める感じ?
『特技』を見ると、『咆哮』とか『ブレス』とか『魔法耐性』とか『水流操作』とか・・・・・間違いなく強いよね。
『特徴』の中に、遭遇したら逃げろ的な表現があるし。
でも普通の人はたぶん逃げ切れないと思うけどね。
あと『人化』と『言語』だけど、人の姿で人の言葉を喋れたら見分けがつかないんじゃないかな。
実は既に人の世界に竜が混じってるとか。
人化してる竜って、人物鑑定で見破れるのかな?
最後に『可食』って。
しかも『超絶美味』って。
差別かもしれないけど、言葉を喋る生き物を、ましてや人化もできる生き物を、なかなか食べる気にはならないと思うんだけど。
まあ人の価値観や嗜好はいろいろあるからな。
でも少なくとも僕には無理だな。
「何をぶつぶつ言ってるの?」
鑑定結果を見ながら自分の世界に浸っていると声をかけられた。
どうやら頭の中で考えてるつもりで、色々言葉に出ていたようだ。
我に返って目の前を見ると、青い髪、青い目、青いドレスと青尽くしの幼女が目の前に立っていた。
なにそれ!
いきなり『人化』ですか。
「君がリバイアタン?」
「そうよ。」
僕の質問に人化したリバイアタンがにっこり笑いながら答える。
見た目も声も人間の幼女そのものだ。
「聖薬草、ありがとう。お腹痛いの、治った。」
「お腹、痛かったの?」
「そう。昨日、変な黒いのが入ってきたから、パクってしたら、それからお腹が痛くなったの。」
変な黒いのを食べたらお腹を壊したと。
いや、変な黒いのは食べちゃダメでしょう。
幼い子が何でも口に入れちゃうのはしょうがないかもしれないけど。
「いつもは何を食べても大丈夫なの!」
僕の表情から考えを読み取ったのか、リバイアタンが言い訳をしてきた。
意外と頭が回る子だな。
見た目より長く生きてるのかもしれない。
「ここにはどれくらい住んでるの?」
海竜とはいえ一応女性だし、直接的に年齢を尋ねるのも失礼かと思い、質問を工夫してみた。
「ええっと・・・たぶん100年くらいかな。」
「100年!」
「そう。外にほとんど出てないから、だいたいだけど・・・」
100年以上生きててもまだ幼体なのか。
竜種の寿命ってどれくらいあるんだろう。
それにほとんど外に出てないって。
だからタコさんが「引きこもり」って言ってたのか。
「どうして外に出ないの?」
ちょっと踏み込んだ質問だけど、思い切って訊いてみた。
竜種そのものがそういう性質なのかもしれないし、リバイアタンに特別な事情があるのかもしれないけど、とにかく理由が知りたかったので。
「他の竜たちにはウロコがあるの。でも私にはないでしょう。だから・・・。」
鱗?
さっきもなんかそんなこと言ってたよね。
確かに首長竜っぽい姿の時には、鱗はなかった気がする。
青くてすべすべしていて、どちらかというとイルカみたいな感じだったかな。
「鱗がないから、引きこもってるの?」
「だって、恥ずかしいし・・・」
う〜ん、竜の感性はイマイチ分からない。
でも海竜という種族はみんなそうなんじゃないのかな。
それともリバイアタンだけ特殊なのか。
「お父さんとか、お母さんには鱗があるの?」
「そういうのは、いない。」
「いない?」
「気づいたらここにいたの。」
「ここで生まれたってこと?」
「そうなのかな。よく分からない。」
うん、物心ついた時から100年も引きこもりなのか。
いや、他の竜のことを知ってるってことは、初めの頃は外に出てたんだろう。
でも自分が他の竜たちと見た目が違うからいじめられた?
「こいつ、鱗がないぞ、変なの。」みたいな?
なんかいろいろ情報が足りない。
こういう時は、教えて「中の侍」。
そう言えば「中の侍」、今回は出て来ないな。
どうしたんだろう。
お〜い、「中の侍」さ〜ん。
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