第90話 パーティー名が判明しました(クエスト:水中・魔力感知)

第二章 葡萄の国と聖女(90)



90.パーティー名が判明しました(クエスト:水中・魔力感知)



〜(会話)〜


メル  : ルル様、さあ旅立ちましょう。

ウィン : まだ旅立たないよ。

メル  : あなたには聞いてませんわ。

ルル  : メル、リーダーはウィンだ。

メル  : !



    *   *   *   *   *   *



メルさんが先走るので、僕はその言葉を否定した。

まだポルトでしたいことが残ってるのですぐには出発しない。

だいたい「旅立つ」って、どこに向かうつもりだろう。

次の目的地も決まってないのに。


僕の言葉に対してメルさんは僕のことを無視しようとしたけど、ルルさんからリーダーが僕であることを指摘され絶句してしまった。

いずれにしろ、すっかりついて来る気満々のメルさん。

ルルさん、責任取って下さいね。


とりあえずメルさんは放置して、いきなりすべての仕事を丸投げされて青褪めているウサ耳のコニーさんと話をすることにした。

ポルトでの活動に必要な情報を得るためだ。

まず気になった事があったので確認してみる。


「コニーさん、ルルさんと僕のパーティーの名前って登録されてますか?」

「はい、登録されております。」

「名前を教えてもらってもいいですか?」

「もちろん・・・というかご自分で付けられたんじゃないんですか?」

「違います。たぶん、コロンギルドのネロさんかグラナータさんが仮名として付けたんだと思います。」

「なるほど、道理で変・・・シンプルな名前なんですね。」


コニーさん今、変な名前って言いかけたよね。

どんな名前になってるんだろう?


「それで、パーティー名は?」

「はい、『ルル様とウィン様』となっております。」


うん、それ、パーティー名というより、個人名を並べただけだよな。

「ウィン様」となってるところを見ると、グラナータさんがとりあえずって感じで付けたんだろう。

あの時は、そういうことを決める前に逃げ出しちゃったからね。


「パーティー名、今すぐ変更されますか?」

「いや、そのうち考えます。ただ、メルさんからの変更要求は却下でお願いします。」

「了解いたしました。パーティーリーダーはウィン様ですので、他の方の指示でパーティー名が変更になることはございません。あと、パーティーメンバーの追加もウィン様次第ですので・・・」

「追加するかどうかは僕が判断します。」

「はい、そうして頂けるとありがたいです。」


コニーさんはあからさまにホッとした表情になり、ウサ耳がピコリと上下した。

メルさんのゴリ押しを受けて困っていたんだろうな。

大丈夫、僕はコニーさんの味方です。


次にメルさんの突然の登場でうやむやになっていたクエストに関して進めようと思う。


「コニーさん、常時依頼の『薬草採取』ですけど、すでに持ってる薬草を納入しても達成扱いになりますか?」

「はい、状況に関係なく規定量を納めて頂ければ達成扱いとなります。」

「例えば、薬草を20本納入すれば、依頼二回分という判断ですか?」

「はい、ギルドの記録上はそういう扱いです。」


ギルドの判断と僕のクエストの判定が一致しているかどうかは分からないけど、それは試してみれば分かることだ。

薬草ならいくらでも出せるしね。


「じゃあ、薬草を100本納入したいんですけど、お願いできますか?」

「100本もお持ちなんですか。ありがたいです。買取の受付にご案内致します。」


僕はコニーさんに案内された買取の受付で鞄から薬草を100本取り出した。

もちろん、薬草クエストで出したものだ。

聖薬草を出すとまた騒ぎになると思ったので、今回は普通の薬草にしてみたけど、ギルドの買取担当者は薬草(普通)ではなく薬草(良)と判定した。

結果、銅貨2枚×10回分ということで銀貨2枚を受け取った。



…クエストが達成されましたので表示します。…


○選択クエスト(水中①)

 クエスト : 冒険者ギルドの依頼を達成しろ

 報酬   : 水中呼吸

 達成目標 : 依頼達成(10回)

 カウント : 達成済み


○選択クエスト(水中②)

 クエスト : 冒険者ギルドの依頼を達成しろ

 報酬   : 遊泳

 達成目標 : 依頼達成(50回)

 カウント : 11/50



「中の女性」からメッセージが流れ、クエストが表示された。

薬草採取の依頼達成はクエストでも10回分にカウントされたようで、無事に『水中呼吸』スキルを獲得した。

次の目標は50回の依頼達成で、報酬は『遊泳』と表示されている。

これは泳ぎが上手くなるスキルだろうか。



…水中での体の動きを強化するスキルです。…



疑問に思っていると「中の女性」から説明のメッセージが流れた。

相変わらず丁寧に対応してくれるのでありがたい。

でもなんとなく「中の女性」の反応がいつもより淡々としているというか、大人しい気がする。

どうしたんだろう?


…実は・・・機関銃トークを聞いていたら、疲れてしまって・・・…


あっ、そういうことか。

確かにアレは疲れるよね。

でも「中の女性」も疲れたりするんだね。


…肉体的な疲れは感じないんですが、精神的には疲れることもあります・・・癒して欲しい(キャ、恥ずかしい)…


それ・・・ホントに疲れてます?

最後の部分を言いたかっただけでは?

逆にこっちがドッと疲れたんだけど。


…失礼致しました。ウィン様、もう一つクエストが達成済みですので表示します。…


○魔力感知クエスト

 クエスト : 魔法攻撃を見極めろ①

 報酬   : 魔力感知

 達成目標 : 魔法攻撃を避ける(100回)

 カウント : 達成済み


○魔力感知クエスト

 クエスト : 魔法攻撃を見極めろ②

 報酬   : 魔力視

 達成目標 : 魔法攻撃を避ける(500回)

 カウント : 105/500



おっ、これは予想外だった。

メルさんとの模擬戦で魔法攻撃を避けまくったのが幸いしたようだ。

フルーツラプトルの討伐で1/100だったカウントが既に達成済みになってる。

念願の『魔力感知』スキルを獲得。

メルさん、ナイスジョブ。

ちょっとメルさんのこと見直さないといけないかもしれない。


次の達成目標は500回で、報酬は『魔力視』となっている。

これを獲得すればルルさんのように魔力を視覚で捉えることができるようになる。

メルさんと模擬戦を繰り返せば、意外に早く到達できるかもしれない。

そんなことを考えていると、


「ちょっと、あなた! 何を一人でぼーっとしてますの! 早く私をパーティーに登録しなさい! もちろんパーティー名も変更しなさい! なんなの『ルル様とウィン様』って! ルル様と名前を並べるなんて不届き過ぎます! 今すぐ『愛しいルル様と可愛いメルと下僕』に変更よ!」


メルさんが再び噛み付いてきた。

(メルさん希望の)パーティー名にいろいろ修飾語が増えてますね。

僕を示す言葉が『従僕』から『下僕』になってるけど、これ、格下げってことかな。

まあ、何を言われようとパーティー名は変更しませんけどね。


メルさんのことちょっと見直そうかと思ったけど、やっぱり面倒そうだな。

この後、どうしようかな。

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