第71話 酒は飲んでも飲まれるな(クエスト:酒鑑定)

第二章 葡萄の国と聖女(71)



71.酒は飲んでも飲まれるな(クエスト:酒鑑定)



○鑑定クエスト

 クエスト : 酒をイッキしろ①

 報酬   : 酒鑑定(初級)

 達成目標 : 酒の一気飲み(10回)

 鑑定項目 : 酒ランク(C〜E)・種類・作り手

 カウント : 2/10



酒鑑定クエストが表示された。

お酒の一気飲みを10回すれば初級の能力が獲得できるらしい。


「鑑定」って結構いろいろなジャンルがあるんだな。

でもマッテオさんには酒鑑定のスキルはなかった。

ワイン造りの専門家なら持ってそうなのに。

まあ、この世界のスキルと僕のクエストがまったく同じとは限らないので、「酒鑑定」は僕のクエスト独自のものという可能性もある。

むしろ「おにぎりを出すスキル」なんてこの世界には絶対なさそうだしね。


鑑定項目の酒ランクがC〜Eと表示されてるということは、初級ではAとかBは鑑定できないのかな。

鑑定レベルが上がれば高ランクのお酒も鑑定できるようになるんだろう。


現在のカウントが2/10だから、この能力を獲得するにはあと8回イッキする必要がある。

飲めるかな。

昨夜もかなり飲んだけど、あまり酔わなかった。

でも普通に飲むのと一気飲みは違うからね。

自分の状態を確認しながらやってみよう。


「どうした、ウィン君? 疲れたのか?」


クエスト表示は僕にしか見えない。

その説明を見つめながら考え事をしてたので、マッテオさんが心配そうに声をかけてくれた。

他の人から見たら放心してるように見えたかもしれない。


「大丈夫です。ところでマッテオさん、このワインはどれくらいの強さなんですか?」

「強さ? エールと火酒の間だな。いっぱい飲まないと酔わないから、それほど強くはないぞ。」


あっ、これ細かい度数とか測ってないというか、気にしてない感じだ。

前の世界の知識だと12〜13度くらいだけど、似た様なものかな。

もう少しイッキしてみるか。

その前に一応確認。


「一気に飲むのはマナーとしてどうなんですか?」

「食事の時はあまりしないな。でも仲間同士の飲み会やお祝いの席では問題ない。今夜はもちろん問題ない。」


マッテオさんのお墨付きをもらったので一気飲みすることにする。

でもいざグラスにワインを注ごうとしてちょっと迷った。


(イッキと認定される分量はどれくらいなんだろう?)


…その辺はアバウトです。ダメな場合はお知らせします。…


「中の女性」からメッセージが流れた。

こちらとしてはありがたいけど、そんないい加減でいいのか?

こちらがが心配することじゃないけどね。


僕は立て続けに8杯のワインをイッキした。

意外と飲めるものだ。

白ワインにしたのも良かったかもしれない。

量を飲むには赤よりも白のほうが飲みやすい。



○鑑定クエスト

 クエスト : 酒をイッキしろ①

 報酬   : 酒鑑定(初級)

 達成目標 : 酒の一気飲み(10回)

 鑑定項目 : 酒ランク(C〜E)・種類・作り手

 カウント : 達成済み


○鑑定クエスト

 クエスト : 酒をイッキしろ②

 報酬   : 酒鑑定(中級)

 達成目標 : 酒の一気飲み(50回)

 鑑定項目 : 酒ランク(B〜E)・種類・作り手・度数

 カウント : 10/50



目の前に鑑定クエストが表示された。

酒鑑定の初級を獲得すると同時に次のクエストが追加されている。

中級にレベルアップするには、あと40杯イッキしないといけない。

これ、単に酔わせたいだけじゃないの。


お酒の鑑定ができるようになったので早速マッテオさんのワインを鑑定してみた。


名前   : マッテオ・ワイン

酒ランク : C

種類   : ワイン(白)

作り手  : マッテオ


名前   : マッテオ・ワイン

酒ランク : C

種類   : ワイン(赤)

作り手  : マッテオ



とてもシンプルな鑑定結果だった。

ワイン名も「マッテオ・ワイン」ととてもシンプル。

なんか親近感が湧く。

個人的にはとても美味しいワインだと思うけど、それでもランクはCなんだね。

まあ量産品だとCランクは評価が高いのかもしれない。

AランクとかBランクは、おそらく高級ワインの類だろう。

Sランクになるとオークションレベルかな。

僕はまだ初級なのでCランクまでしか鑑定できないけどね。


酒鑑定を次のレベルに上げるためにも、今後お酒を飲む時はできるだけ一気飲みしよう。

そう考えながらさらにワインをイッキしてると、女性陣の囲みを抜け出してルルさんがやってきた。


「ウィン、ドワーフ族のような飲み方だな。」


ルルさんは僕の隣に座りながらそう言った。

ドワーフ族の方々は、やっぱり飲み方が豪快なんだろうか。

この世界のドワーフ、縦にも横にも大きいしね。


「ルルさんは、大人気ですね。」

「当たり前のことしか話してないのだがな。農園の女性はみんなあれほど騒がしいのか?」


いえ、それはルルさんの言葉のチョイスと省略の仕方に問題があるからだと思います。

指摘しても無駄だと思うのでしませんけど。


「ところでウィン、この後どうする?」

「この後とは?」


ルルさんから意味不明の質問が来た。

もう夜だし、魔物退治は終わったし、お腹いっぱいだし、お酒も飲んでるし、あとは寝るだけじゃないの?

あっ、宿泊場所の心配かな。

小屋があるから一瞬で教会に送れるけど。


「夜の戦闘訓練に決まっている。」

「はいっ?」


夜の戦闘訓練?

聞く人が聞くと危ない響きがあるけど、ルルさんだから言葉の通りだろう。

ええ〜これからまだ訓練するつもりですか?

イッキし過ぎて割と酔っ払ってるんですけど。


「ああ、ルルちゃん見っけ。」


いきなり後ろから女性の大きな声が聞こえた。

『ルルちゃん』?

『見っけ』?

振り返るとそこには、少し出来上がってるアリーチェさんがいた。

両手にワインボトルを持っている。

マッテオさんと似た者夫婦って感じですか。


「ルルちゃん、ここにいたの? あらウィン君、ルルちゃんを独り占めするつもり? まだダメよ。夜は長いんだから。」


いや、独り占めする気はまったくありません。

それより『ルルちゃん』って。

『ルル様』じゃなかったんですか?

言葉にできずに心の中で呆気に取られているとルルさんが応じた。


「ダメなのか? 私としてはすぐにでも(戦闘訓練を)したいのだが。」

「キャー、ルルちゃんダメよ。人前でそんなこと言っちゃ。こっちへ来なさい。」


そしてルルさんはアリーチェさんに回収されていった。

そして宴は・・・まだまだ続くようだ。


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