第24話 精度が上がったようです(従魔:ハニちゃん)

第一章 はじまりの島(24)




24.精度が上がったようです(従魔:ハニちゃん)



戦いのインターバルを利用してお昼ごはんを食べることにする。

昨日の経験から、しばらくは大丈夫だろうと判断した。


いつも通り、ウサくんに薬草、ベルちゃんに石、タコさんにおにぎりをそれぞれ出して、そこでひとり増えていたことに思い至り考え込む。


(コンちゃんのごはん・・・どうしよう。)


コンちゃんの情報を再確認する。

魔物の情報は見ようと思えばいつでも視界内に表示される。



○カニバラス・ミニマ ☆☆☆

 体型 : 小型

 体色 : 緑色

 食性 : 肉食(昆虫類・小動物を食べる。)

 生息地: 森の中。

 特徴 : 植物系食虫植物型

      攻撃・捕縛用の長い根と蔓を1本ずつ持つ。

      緑の多い場所では視認困難。

      火耐性が低い。

 特技 : 打撃・捕縛・緑隠



(食性は肉食。昆虫類、小動物を食べるか・・・。)


困った時の「中のヒト」頼みだと思い、ダメ元で念じてみた。 


(肉が欲しい。)


反応なし。

視界にクエストは表示されない。

試しに言い方を変えてみる。


(昆虫類が欲しい。小動物が欲しい。)


…自分で狩れ…


今度は視界の下にメッセージが流れた。

「中のヒト」、安定の塩対応。

予想はしてたけどね。


確かに自分で狩ってもいいんだけど、周りに生きものがまったく見当たらないんだよね。

森の中なのにクエスト対象の魔物以外何もいない。

こちらを警戒して姿を消してるのか。

討伐系のクエスト中のルールなのか。


さてどうしようかなと思いながらコンちゃんを見ると、タコさんのほうをじっと見ている。

タコさんは3本の足にひとつずつおにぎりを持って、順番にかじっている。


(コンちゃん、もしかして・・・。)


おにぎりをひとつクエストで出して、コンちゃんの前に差し出してみた。

コンちゃんは蔓の両手でそれを受け取り、嬉しそうに食べ始めた。


(コンちゃん、それ、肉じゃないからね。 

 昆虫でも小動物でもないよ。 

 えっ? 中に焼豚が入ってる? 

 それで・・・いいのか? 

 こちらは用意するのが簡単でいいけど。)



食事タイムが無事に終わり、ハニーとの戦いを再開する。

森の中を奥へと進んで行くと、すぐに複数の羽音が聞こえてきた。

後半戦はいきなり3体のハニーからスタートするらしい。

前方と左右からそれぞれ1体ずつのハニーがこちらに向かって来る。


「まずは、2体倒すよ。」


声に出して指示すると、「了解」という意思が仲間の魔物たちから返って来るのが分かる。

意思疎通に問題はない。

指示と同時にウサくんは地面に沈み、コンちゃんは森に紛れ、タコさんは木の裏に隠れる。

タコさん、赤い足が木からはみ出てるけどね。


3体のハニーの毒針攻撃をかわしながら「水」で反撃する。

前半戦はアバウトな狙いで大量の水を連発してたけど、慣れてきたこともあり後半はもう少しスマートに戦えてる気がする。


毒針を避けた瞬間に「水」を発動すると、水の塊が直接ハニーを包み込んだ。

かなり精度が上がっているようだ。

3体のうちの2体を簡単に地面に落とし、短剣でとどめを刺し、ベルトコンベアー作戦を続行する。


しばらくの間、2体に増えると1体を倒すという作業を繰り返していると、ハニーの「仲間呼び」の間隔が明らかに短くなった。

少し手こずると、すぐに個体数が増えてしまう。

しかも倍々で増えるので、あっという間に膨れあがる。


2体のうちの1体を倒そうとしていると「仲間呼び」で4体になる。

慌てて1体を処理すると、残りの3体が「仲間呼び」を行い、6体に。

そしてまた1体倒している間に残り5体が「仲間呼び」で10体に。


(これはまずい。仲間呼ぶの早過ぎる。)


こうなるともう作戦とか言ってられない。

とにかく全力で戦うしかない。

スラちゃんの鳴き声が矢継ぎ早に危険を告げ、複数の毒針があちこちから飛んで来る。


(精度も上がってきたことだし、アレも試そう。)


森の中はかなりの乱戦展開になっていた。

大量の毒針が飛び交っているので、「水」でハニーを落としても、コンちゃんとタコさんがすぐには対応できない。

もちろん短剣でとどめを刺すこともできない。


(コンビネーションも大事だけどここ一番は一撃必殺も必要だよね。

 ということで、炎!)


封印していた「炎」を単発で発動すると、狙ったハニーが一瞬で燃え上がった。

炎による狙撃、大成功。

確実にクエスト発動の精度が上がっている。

これなら後処理がない分、ハニーの数を早く減らすことができる。


続け様に3体のハニーを「炎」で倒すと、炎上した仲間を見て驚いたのか、残りのハニーたちがいきなり鳴いた。

もちろん「仲間呼び」だ。


個体数が10体を超えてしまうと、もういちいち数の把握をしている暇はなくなる。

「水」を乱れ打ちしながら、狙える時には「炎」を打つ。

炎上したハニーは空中で消え、濡れて落ちた個体はコンちゃんとタコさんがなんとか処理してくれた。


毒針で体のあちこちに傷を受けたけど、毒耐性(中)のおかげかそれほど痛みは感じなかった。

もちろんタイミングを見てウサくんが「ヒール」を掛けてくれたけどね。


気がつくと、空中を飛ぶハニーは1体もいなくなっていた。

新たに現れる気配もない。


地面に落ちて麻痺しているハニーを1体ずつ短剣で光の粒に変えていく。

「水」を連打したため、地面はかなりぬかるんでいた。


最後の1体が光の粒となって消えるとクエストが表示された。



○クエスト : TAME

 報酬   : ハニー・ミニマ

 達成目標 : 100体

 カウント : 達成済み


○クエスト : 毒に耐えろ③

 報酬   : 毒耐性(大)

 達成目標 : 毒を受ける(50回)

 カウント : 達成済み


○クエスト : 毒に耐えろ④

 報酬   : 毒無効

 達成目標 : 毒を受ける(100回)

 カウント : 85/100


クエストを達成して毒耐性(大)を獲得した。

あと15回毒を受けると「毒無効」を獲得できるようだ。

ここまで行けば毒の心配はしなくて済むのかな。


(もうちょっと効果について説明とかあれば・・・)


 …けっ…

 

視界の下を短いメッセージが流れる。

「けっ」って言いましたよ、今。「けっ」って。


「中のヒト」の態度に憤慨していると、目の前の空間に光の粒が現れ、一点に集まり出した。

集まった光の粒が一際大きく輝くと、そこに1体のハニー・ミニマが現れた。

黄色い短毛で覆われた顔の頬には、そこだけ白い短毛で星のマークが印されている。


ハニー・ミニマのテイムに成功。

名前は「ハニちゃん」で決定。

覚えやすい名前が一番だよね(再び言い訳)。

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