第8話 仲間を増やします(ウサくん:レプス・ミニマ)
第一章 はじまりの島(8)
8. 仲間を増やします(ウサくん:レプス・ミニマ)
(タコさん、よく食べるね。)
タコさんが3個目のおにぎりをむしゃむしゃと食べている。
明太子、ツナマヨと食べて、今はおかかだ。
小さい体のどこにそんなに入るんだろう。
こちらを警戒する素振りは、まったくない。
むしろすっかりリラックスしているように見える。
おにぎりを食べながら、別の2本の足を同時に使って、おにぎりのお皿と水の入ったグラスを、こちらに差し出してくる。
(それ、もともと君のものじゃないからね。)
そう心の中でつぶやくと、タコさんはちょっと恐縮した感じになり、お皿とグラスを元の場所に置き直した。
なんか、通じてる気がする。
「好きなだけ、食べていいよ。」
声に出してそう言うと、タコさんは嬉しそうに4個目のおにぎり(焼豚)に足を伸ばした。
結局タコさんは、おにぎり4個を平らげ、水4杯を飲み干して、トコトコと海の中へ帰って行った。
テイムに成功したのだと思うけど、呼べば来るんだろうか?
召喚とかできるのかな?
ほっぺに浮かんだ星のマークがテイムの印なのか?
よく分からないけど、特に支障はないから今のところは、まあいいか。
さて、「タコさんとおにぎり」事件で脇道に外れてしまったけど、小石と薬草に戻ろう。
とりあえずクエストが成立しているので、それぞれ10回まで達成してみる。
同じことを続けるのも飽きるので、スクワットと肩足立ちを交互に行なった。
それにしても、クエストの達成目標が偏っているね。
「中のヒト」、体育会系なのかな。
○クエスト : STONE
報酬 : 石(小)
達成目標 : NO NEED
○クエスト : HERBS
報酬 : 薬草(1束)
達成目標 : NO NEED
10個の小石と10束の薬草の前で立ち尽くす。
流れから考えて、このふたつにも、きっと理由があるはずだよね。
「中のヒト」は、あいかわらずノーヒントだけど。
教えてもらおうなんて、甘ったれるなってことですね。
焦っても仕方ないので、何か思いつくまで、ぼーっとタコさんが帰って行った海を見ることにする。
戻って来るかもしれないしね。
しばらくして、視線を感じた。
前からではなく背中に。
後ろを振り返ると、草原のぎりぎり端のところに「ウサくん」を1体(1羽?)発見。
長い耳もツノも目も見えているので、お饅頭には見えない。
ウサくんは、こちらをじっと見ている。
こちらからも見つめ返す。
すると、ウサくんの視線が少し右下に逸れる。
(なんだろう?)
と思っていると、すぐに視線がこちらに戻る。
そしてまた視線を右下に外し、すぐにまた戻す。
それを何度も繰り返す。
(なるほど。)
ようやく視線移動の意味に気づいた。
ウサくんが見ていたのは、水とおにぎりと小石と薬草が置かれている場所だった。
クエストの報酬が置かれた場所に僕がしゃがむと、ウサくんの視線がこちらの動きを追ってくる。
心もち目を見開いてワクワクしている様に見えるね。
まず、水の入ったグラスを持ち上げてウサくんを見る。
ウサくんは首を右に傾げる。
次に、おにぎりのお皿を持ち上げてみる。
ウサくんは首を左に傾げる。
さらに小石を持ち上げると、今度は首を右に傾げる。
最後に薬草を持ち上げると、高速で首が縦に二度振られた。
ウサくん、反応が分かりやすいね。
(また、餌付けかな。)
そう考えると、すぐにクエストが表示された。
もう「設定」の手順もいらないのだろうか?
○クエスト : TAME(レプス・ミニマ)
報酬 : レプス・ミニマ(1体)
達成目標 : ツノに触れ
ウサくんは、レプス・ミニマっていう種族なんだね。
そういえば、タコさんはクラーケ・ミニマだったな。
呼び名は適当に付けちゃってるけど、まあいいよね。
それにしても「ツノ」に触るのって、ハードル高くない?
逃げられる未来しか想像できない。
まあ、やってみるしかないけどね。
薬草の束を3つほど抱えて立ち上がると、ウサくんの長い耳がたるんと垂れた。
それは期待とか喜びを伝えてるのかな。
ウサくん、意外と感情表現が豊かだよね。
そのままウサくんに向かって歩き始めると、今度は長い耳がピンと立つ。
薬草は欲しいけど警戒はしてるってことかな。
一度立ち止まり、慎重に一歩近づいてみる。
ウサくんはそれに合わせて一歩下がる。
僕がもう一歩近づく。
ウサくんはもう一歩下がる。
これだと距離をつめられないよ。
こちらが草原の端にたどり着くと、ウサくんは10歩分くらい草原の内側に下がっていた。
(どうしようかな。無理に近づくと逃げそうだし。)
少し考えてから、古典的な技を使うことにした。
一つ目の薬草の束を、少し前方に放り投げる。
ウサくんは一瞬ビクッと反応する。
二つ目の束は、それより少し手前に置く。
ウサくんは警戒しながら一つ目の薬草の束を凝視している。
僕は三つ目の束を手に持ったままで、草原の端にゆっくりと胡座をかいて座った。
ウサくんは、鼻をヒクヒクさせながら、用心深く一つ目の薬草の束に近づいて来る。
薬草の魅力には抗えないようだ。
視線をこちらに向けたままで薬草のところまで進んで、その端っこをそっとくわえる。
そしてそこからは、一心不乱に薬草を食べ始めた。
高速で口を動かして押し込む感じ。
(ウサギというより、リスみたいだな。)
一つ目を食べ終えたウサくんは、すぐに二つ目の薬草に飛びついた。
見ていると二つ目もあっという間に口の中に消える。
そして何の戸惑いも見せずに三つ目に飛びつく。
僕が左手で握っている薬草の束に。
右手を伸ばすと、簡単にウサくんのツノに触ることができた。
ウサくんの体が光に包まれ、しばらくして光が消える。
ウサくんは光が消えた後も、ひたすらモグモグし続けている。
そしてそのほっぺには、やっぱり白い星のマークが現れていた。
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