第11話 大切な仲間
俺たちは、ライベルトが一望できる場所にたどり着いた。すると、セナが真剣な表情をしながら話しかけてきた。
「まず、ハッキリ言うね。私、勇者様とか好きじゃないから」
「え?」
その言葉に驚きを隠しきれなかった。なんせ、勇者とは全国民が敬愛している存在だと思っていたから。
「まあ、最初は好きだったよ。私を助けてくれた人達なんだから。でもね、私はダイラルのことを一番信用している。だから、ダイラルを貶す人を好きになんてなれない」
「......」
「なんでって表情をしているね。昨日も言ったけど、私はダイラルに命を救われた。勇者様や聖騎士様、賢者様じゃない。ダイラルに救われたの」
「でも、助けたといってもちょうど近くにいたからであって......」
そう。あの時助けたのは、セナの一番近くに俺がいたからだ。もし、俺のいる位置に居たら助けていたと思う。
「近くにいたからじゃなくて、近くに居てくれたの」
「え......」
「覚えていないかもしれないけど、ダイラル以外のみんなは盗賊を倒すことだけを考えていて、私たちを助ける行動なんてとっていなかった。でも、ダイラルは違う。あなたは私たちを助けることを最優先に考えてくれてた。だから私を救けれたの」
そう言われても、あの場のことを鮮明に思い出すことはできない。でも、セナの言う通り、ハリーたちは敵と思った奴に対しては攻撃を仕掛けに行くところがある。だから、俺は後方から人を助ける行動を取っていたのは事実だ。
「そっか」
「うん。だから私はあの人たちよりもダイラルを信用する。私が信用したいと思った人なのだから」
「ありがとう。本当にありがとう」
俺はそう言っている途中で、涙がこぼれ始めた。
(あぁ。俺の行動は間違っていなかったんだ)
今まで、何度も自身の行動を否定してきた。だけど、最初はビルにヒーローと呼んでもらい、セナには英雄と呼んでもらえた。
そして今、セナから今まで行ってきたことが肯定してもらえた。それが俺には、どれほど嬉しいことなのか言葉に表すことも出来ない。
すると、セナが俺を抱きしめて来た。
「ダイラル、泣いて良いんだよ。辛いときも、嬉しい時も泣いていいの。だから、今は泣いて。そして、次に進もう」
「あ、あぁぁぁぁぁぁ」
(本当に俺を信じてくれてありがとう)
それからどれぐらい泣いたか分からない。俺はとっさに羞恥心が舞い込んできて、セナの元から離れた。
「セナ、ありがとう」
「ううん。支えに慣れてよかった」
その言葉に首を傾げた。
(支えに慣れてよかった?)
「一年前からダイラルに恩返しをしたいと思ってた。だから、支えられてよかった」
「そっか、ありがとう。なら、俺もセナに恩返しをしたい」
「え?」
セナが俺に恩返しをしたいと思ってくれているのと同じで、俺も恩返しをしたい。セナが居なかったら、俺は確実に心が折れていた。だからこそ、セナの力になりたい。
「何か困っていることは無いか?」
俺が尋ねたことに対して、セナは一瞬考えた素振りを見せた後、暗い表情になった。
「一つある......。私が冒険をしていた理由の一つもそれ」
「何?」
「私の友達が目を覚まさずに寝込んでいるの。その手掛かりを探すために子爵家として情報を集めていたけど、それが見つからなくて冒険者になったんだ」
(そ、そうだったのか)
「だから、もしできたらその子を助けたい」
俺はその言葉に二つ返事で了承をした。すると、セナは少し動揺していた。
「そんな簡単に承諾していいの?」
「あぁ。俺もセナの友達を助けたい」
力になれるかは別として、こんな話を聞いて断れるわけがなかった。
「ありがとぅ」
「仲間じゃないか」
そう。俺とセナはもう仲間なんだ。困った時は助け合うのが当たり前。それこそ、ついさっきみたいに。
「じゃあ早速、家に案内するね」
「お、おぅ」
そして、俺はセナの実家に向かうことになった。
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