第6話 魔眼のちから
「だったら、試してみる価値はあるかもしれない」
俺がボソッと呟くと、セナさんは首を傾げながらこちらを見ていた。
「セナさん、俺の事を信用できますか?」
こんな状況で聞くのはおかしいに決まっている。信用とは、長い年月一緒に行動をして培うものなのだから。
だけど、今の状況で俺が行おうとしているのは、俺の事を信じてもらわなくてはできないこと。
(やっぱり、難しいか......)
俺が次の手を考え始めようとした時、セナさんが頷いた。
「ダイラルさんのことは信用しています。何をすればいいですか?」
ダンジョンに入る前は励ましてくれたし、今だってそうだ。なんでこの人はあって間もない俺の事を信用してくれるんだ。
だが、それが今の俺にはものすごく嬉しく感じた。
「俺がオーガのことを引き付けます。セナさんは、オーガの首を狙って攻撃をしてください」
「わ、分かりました」
セナさんの言った言葉を聞いてから、オーガと対面して戦い始めた。
先程同様、オーガは俺に物理的攻撃を仕掛けてくるが、ギリギリのところで避ける。それに続くように、
すると、オーガは俺の事を睨みつけながら叫びだした。
「ウゴゴゴゴゴゴゴ」
その言葉と共に、オーガは突進をしてきながら
(今だ!!)
俺は、オーガの攻撃を避けて、剣に火魔法を付与させて足を切り落とした。その威力は、今までの付与魔法とは格段に違かった。
(は、どうなっているんだ? だが、今はこんなことはどうでもいい!!)
「セナさん!!」
俺がそう叫ぶと、セナさんが高火力の
「た、倒したのか」
ホッとして地面に座り込むと、セナさんと親子がこちらに近寄ってきた。
「ダイラルさん、やりましたね」
「は、はい」
すぐさま立ち上がり、親子の元へ駆け寄って行き、男の子に話しかける。
「大丈夫?」
「う、うん。ありがと」
「いいよ。本当に無事でよかった」
後少しでも、来るのが遅れていたら親子ともども殺されていた可能性があると考えると、ぞっとしてしまう。だからこそ、今みたいな状況になってくれて本当によかった。
すると、男の子のお母さんが頭を下げて言った。
「本当に助けていただき、ありがとうございました」
「いえ。気にしないでください」
その後、十分ほど休憩を取ってからアキナ村へと戻っていった。
道中話していて、男の子の名前はビル、お母さんの名前はリーということが分かった。
そこで、なぜ両親がダンジョン内にいたのかを聞いてみる。
「それは、ごめんなさい」
「ん?」
「僕が、ダンジョン内の原因を突き止めようと思って......」
(あ~)
それで、ビルが中に入って行ったから、リーさんもついて行ったってことか。
「ビル、行動したいという気持ちはわかる。だけど、行動に移してしまうのは無謀ってやつだよ」
「......」
そう。実力が無いのにダンジョンに入るのは、ダンジョンの調査ではない。ただの無謀だ。
「でもな、その気持ちは忘れちゃダメだよ」
「え?」
「今日起こったことでわかっただろ? 自身に力が無かったらすぐに殺されてしまうと」
ビルは下を向きながら言った。
「う、うん」
「だから、今日の失敗を忘れずに、次に生かせばいいじゃないか」
失敗することが悪いわけじゃない。だけど、自分の実力も分からずに行動することは良くない。
最悪の場合、ビルやリーさんは死んでいたのだから。でも、結果的に今回の失敗はビルに取って糧になると思った。
(この子は今後強くなるな)
「ビルは強くなるよ。そのためにも今後頑張れよ」
「うん!!」
その後、俺たちは何もダンジョン内で起こらずにアキナ村へと戻っていった。
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