魔眼の英雄〜「無能の雑魚」と勇者パーティを追放されたので、勇者の裏側で英雄として成り上がる。え?今更戻って来いと言われてももう遅い。
煙雨
1章 英雄の一歩
第1話 追放
「明日から来なくていいぞ」
「え?」
突然、屋敷の中で勇者---ハリーに言い渡された。
「ダイラル、はっきり言ってやる。お前を追放するって言っているんだ」
ハリーから言われた言葉に頭の中が真っ白になる。
俺は、口をゆっくりと動かしながら尋ねる。
「な、なんで......」
俺の言葉に、ハリーや聖騎士であるリバルと賢者のマリアが笑い出した。そして、腹を抱えていたハリーが真顔になりながら言った。
「お前が無能だからに決まっているだろ」
「ど、どこが無能なんだよ‼」
「全部に決まっているだろ。剣術においては俺やリバル以下、魔法もマリアみたいに使えるわけではない。そんな奴は勇者パーティにはいらない」
「思い出してくれ‼ 何度もお前たちの命を救ってきたじゃないか」
ハリーやリバルがカバーしきれなかったところを助けたり、マリアがモンスターに狙われたときは真っ先に助けていた。
「それはお前が運よく俺たちをカバーできる位置にいただけ」
「違う‼」
ハリーたちの位置やモンスターの居る場所を注意深く見ていたからこそできていた。それをなんでわかってくれないんだ。
「違くねーよ。はっきり言って、お前じゃなくてもいいんだよ。俺たちのカバーをする役なんてこの世にごまんといる。俺は突出した才能を持った仲間が欲しいんだよ」
(そんなこと今更言われたって......)
だったら、最初からそう言ってくれればよかったじゃないか。そう思っていると、ハリーが言う。
「それに、お前の眼が勇者パーティに対して不利益な噂しかもたらさないんだよ」
「そ、それは......」
ハリーの言う通り、俺の眼はの所為であまり良い噂が流れなかったのは事実だ。普通の人なら黒や茶色、青色など両目の色が一色に統一されている。
だけど、俺の眼は左眼が青、右目が赤色である。いわゆるオッドアイ。
(だけど、眼の色なんて治せるわけがないじゃないか......)
俺が俯きながら最後の希望にかけて言った。
「今まで仲間だったじゃないか。もう少しだけチャンスをくれないか? そこで実力を証明するから」
俺の言葉に、ハリーはため息を吐いた。
「そんなことしなくていい。お前に合わせるつもりはなかったけど、まあいいか。来てくれ」
すると、ハリーの真後ろに俺と同い年ぐらいの好青年が現れた。
「初めまして。本日より勇者パーティの一員になるアクル・ジンジャーと申します」
「ぁ......」
その言葉の意味が一瞬にしてわかってしまった。俺が勇者パーティに必要とされていないということが。
みんなの顔を見ることが出来ない状況で、ハリーは冷たい声で言った。
「だからさ、さっさと抜けてくれないか? いや、抜けろよ。お前みたいな無能はいらないんだよ」
「わ、わかったよ。今までありがとな」
俺はみんなの表情を見ることが出来ずに、屋敷を立ち去ろうとした。その時、机の上に金貨が数枚置かれた。
「無能とはいえ、お前も仲間だったからな。これは手切れ金だ。これで頑張って生きてくれよ」
ハリーがそう言った瞬間、みんなから笑い声が走った。
(クソ。なんで俺がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないんだよ)
そう思いながら、机の上にある金貨をバックの中にいれて、屋敷の出口に向かった。すると、アクルに肩を叩かれた。
「元勇者パーティのお荷物さん。今までご苦労様でした。これから無能らしく有象無象の一人として頑張ってください」
その言葉を聞いた瞬間、アクルの顔を見た。すると、俺の事を蔑むように見ていた。
(クソ......)
俺は何も言い返すことが出来ないまま、この場を後にした。
この時、俺はハリーたちに決意した。
(絶対に見返してやる)
★
この時の勇者パーティ全員は、ダイラルの位置取りやカバーの早さのおかげで安全に戦えていたことを知る由もなかった。
それに加えて、新たに加えた仲間が考えていた企みによって、勇者パーティがどん底に落ちていくのはそう遠い話ではなかった。
🔷
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