037.海で食べるスイカって最高だな!

 アオはやる気に満ちていた。


 棒を地面な突き立てると、その周りを回り始めた。


「いーち!にー!さーん!」


 回り終わって僕が指示を出そうとしたその時。突然、スイカに向かって走り出した。


「……ええっ??なんで場所が分かるの??」


 僕は驚きの光景で目が飛び出そうだった。アオは全速力でスイカへ向かって行く。


 よくよく観察すると、アオは舌打ちのようなことをしていた。あれは、いったい??


 スイカの近くになるとアオは飛び跳ねた。そして、棒を大きく振りかぶって、声を荒げる。


「よーーーいしょーーー!!!」


 着地と同時に棒を振り下ろした。


 バコン!!!


 スイカに棒が勢いよく当たった。スイカは見事に真っ二つになり、美味しそうな赤い部分が姿を現した。


 アオは目隠しを取ってスイカを見た。その瞬間、笑顔で飛び跳ね、大喜びする。


「イェー!」


 アオは僕にピースサインを送ってきた。


「い、いや、凄すぎだよ!なんかアクロバティックみたいだったよ??」


 僕はアオに駆け寄る。


「でしょー!はい!スイカは私の方が早く割れたから私の勝ちー!」


 アオは満面の笑みだった。


「それよりも、なんでスイカの位置が分かったの?」


 アオは人差し指を空へ向かって差しながら、自慢気に話した。


「人魚はね、夜にも海の中を泳ぐの。それに、深くなった時とかは昼間でも暗闇に包まれるワケね?そんな時は自分の目はアテにならないから音波を出してその跳ね返りを感知してるの。そうすることで、立体物を感知できるから見えなくても大丈夫ってわけ」


「す、すごい……」


「でしょでしょー」


「でも、それって少しずるくない?」


 僕が言った瞬間、アオはドキリとしていた。


「し、勝負は勝負だよ!はいっ!私の勝ちだからねー」


 アオはそう言ってスイカを眺めていた。


 僕は割ったスイカを丁寧に切り直して行く。食べやすいようになったら、二人で分けた。


「いただきまーす!」


 いつのまにか夕日に染まった海をながめながら、僕達はスイカを食べた。


「うーん!美味しいー!」


 アオは口をもぐもぐさせた。相変わらず、幸せそうな顔をして食べている。


 僕もその顔を見ながら食べるとなぜが嬉しくなった。冷えていないスイカなのに、なんでこんなに美味しく感じるんだろう?


 アオと食べるものは決して特別良いものってわけでもないのに、なぜか美味しくなると言うか、幸せに感じると言うか。


 僕は微笑んだ。


 あぁ。海で食べるとスイカって最高だなー!

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