036.スイカ割りをしよう!

 僕たちは砂浜へ向かった。新聞と、布、スイカを持って行った。スイカを割るための棒は流木で代用することにした。


「ねぇー!どうなってやるのー?」


 僕は流木を探していた。新聞紙の上にスイカを置いて、準備が終わったアオは遠くにいる僕に向かって声を大きく出している。


 僕は棒を拾って、走る。アオの元へ戻ると、僕は説明を始めた。


「持ってきた布を、目を覆うように巻いて、棒を持つ。そして、スイカから離れているところに立って、まずはその場で3回くらい回る。


 それで、もう一人の方がスイカがある方に目隠ししている人を誘導するんだ。そして、うまく誘導することが出来たら、棒を持った人はスイカを割るんだ」


「へー、なるほどねー」


 アオは顎に手を当てる。少し間が空いた後、アオは僕の方を見た。


「楽しそうだね!」


 アオは笑っていた。


「じゃあ、どっちから始める?」


「じゃんけんしよう!」


「うわ!私初じゃんけんだ!いやー、バカ殿様に感謝だねー」


「よし、じゃあやるぞー!」


 僕たちは声を合わせる。


「最初はグー!じゃんけん……ポン!!」


 僕がパー。アオがチョキを出していた。


「いよっしゃー!私の勝ちー!じゃあ先にユウ君からだねー」


「いいぞー!僕が先に割ってやる!」


 僕はスイカから離れて行く。少し離れたら、目隠しをつけて、棒の周りを回った。


「いーち、にー、さーん!」


 僕は回り終わると棒を構えた。


 もちろん、目の前は真っ暗だ。しかし、安心できる。なぜなら、僕は自分の位置をだいたい把握できているし、平衡感覚もあまり失われていないからだ。だから、たとえアオが騙してこようとしても、対処できるのだ。


 それに、アオにはスイカ割りの醍醐味を伝えていない。つまり、僕に嘘はつかないだろう。


「右ー!右だよー」


 僕は右に曲がっていく。


「そうそう!そのまま真っ直ぐ進んできてー」


 うんうん。だいたい想像通りだ。つまり、嘘はつかれていない。このままいけば、スイカにたどり着く。


「オーライ!オ〜ライ!オオライライ〜!!」


 アオはノリノリだ。


「よしよし、あとちょっと前。あっ!待って!一回棒を振り落としてみて、優しく」


 僕は棒を地面に沿わせるように確認して行く。左右に動かすと、カツンと大きなものが当たった。


「それそれ!それだよー!」


 よし!怖がらない!カッコいいところを見せるんだ!全力でいくぞ!


 僕は棒を思いっきり振り上げた。


「うおーーー!!」


 大きな掛け声と共に、僕は棒を振り落とした。


 バコッ!!


 鈍い音が響き渡る。よし!これは割れただろう!


「どう?どうなった?」


 僕は目隠しを取った。アオはしゃがみ込んでスイカを見ている。


「え?こんなんだったよ」


 ある箇所を指を刺しながら、つまらなさそうに言った。僕が打っただろうところには、小さな傷がひとつしかついていなかった。


 ……あれ??僕の力ってこんなものなの?


 アオの目が細い。完全に僕のことを見損なっている。くそー!僕のバカ!みっともなさすぎる!


「じゃあ…次は私の番だね!」


 アオは遠くに行った後、目隠しをした。


「さぁ!やってやんよーー!!」


 アオは棒を持って構えた。その構えはどこか様になっていた。

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