033.家族紹介
あー、本当に最悪だ。タイミングが悪すぎる。冷や汗が止まらない。どうしよう、変な風に勘違いされたよな?きっと。
僕はアオと距離をとった。そして弁解する。
「ち、違うんだ。2人とも。僕の話を聞いてくれないか?これはいろんな事情があって……」
「おい、ユウー……」
「は、はい」
お母さんは僕を睨んでいる。
「お母さんはユウを半端な男に育てた覚えはないんだけどな……?
しっかり、説明してもらおうか?」
「は、はい……」
僕は息を詰まらせるように返事をした。
──
「……なるほど?つまり、それを取りあってたらユウがバランスをたまたま崩してたまたまその子に乗っかるようになっちまったと」
「……そ、そういうことです」
お母さんとアオは椅子に座り、僕は地面に正座させられていた。妹は部屋の隅に立っている。
「たまたまが多すぎだろ……。
ねぇ、おねぇさん」
「はい?」
お母さんはアオと話を始めた。
「ユウのやつ、なんか酷いことしなかった?大丈夫?」
「酷いこと??……はい。大丈夫です。特になにもされてません」
アオはお母さんの目を見ていた。
一瞬の静寂が部屋の中を襲う。
そして、お母さんは笑った。
「……そうかそうかー!そらなら良かったよ。ユウがなんか酷いことしてるのかと思ってた。それじゃあいいんだ」
お母さんの大きな声が部屋中に響き渡る。
僕のお母さんはバリバリのキャリアウーマン。しかしそれを感じさせないほどの明るい性格である。どちらかと言うと、男っぽい、イケメン女子というやつだ。
髪はショート。少し小柄だが、それよりもこの気迫がすごいので、大きく見える。
明るい笑顔が絶えず、話すことが大好きな、そんなお母さんだ。
僕とは正反対だ。
ちなみに、ラインだけは真面目である。仕事病が抜けないからだ。
「それにしても、可愛い子だね〜。名前はなんていうの?」
「私は斎藤アオって言います」
「…ん?名字同じなの?」
あー!やばい。そうだった。アオは僕の妹ってことになっていた。
「……あぁ、違うよ?サイトウはサイトウでも西に藤って書いて西藤さんだから」
「あー、そういうことね。名字が同じなのかも思ったよ。この辺りに斎藤さんってなかなかいないからさー。
アオちゃんはユウと同じ学校?」
あ、危ない。僕は胸を撫で下ろす。
「いえ、学校には行ってないです」
「へー、じゃあなんか他のことしてるの?」
「いえ、特にはなにもしてないです」
「そうなんだ。じゃあユウとはなんで知り合ったの?」
「近くにある海で、知り合いました」
アオの質問コーナーが始まってしまった。やばいぞ?このままだと、なんかボロが出てしまいそうだ。
「……そ、そうだ!それより、アオに僕の家族を紹介するよ」
僕はなんとかこの質問コーナーを終わらせたい。僕はお母さんの方に手を向ける。
「こちらは、僕のお母さんです!名前は斎藤リナさん。僕の家の大黒柱と言っても過言ではないね!明るく、面白く、カッコいい!そんな僕のお母さんです!!」
お母さんは満面の笑みで頷きながら僕の話を聞いていた。よし!機嫌は治ってきたぞ!
僕は立ち上がって妹に寄っていく。
「そして、こちらが僕の妹の斎藤ミサです!今は中2。僕とはあまり似てなくて、お母さんの血を濃く受け継いだミサは美貌とコミュ力を備えた自慢の妹です!」
「やめて、兄ぃに」
僕の妹は僕だけにかなりのツンだ。まぁ、いつも通りで安心した。
でも、あまり今日は話さないな。絶対僕のあんなところ見たら茶化してくると思っていたのに。
ミサは部屋の隅にある座布団の上に座った。
「それで?あなたたちはいつからそういう関係なの??」
お母さんはニマニマした顔だった。絶対変なこと考えてる!!
「……は??お母さん、何言ってるの?そんなんじゃないよ!」
「ユウこそ、なに言ってんの?お母さんに黙って家に女の子連れてくるなんて、そんなの彼氏と彼女以外なにがあるの?
……待って。もしかしてユウ。それとも最低な男になっちゃったの?」
お母さんはまた僕を睨む。
「違う違う!そんなんでも無いから!アオは僕の友だちだから!」
「いえ、彼女ですけど……??」
突然のアオの告白。お母さんは「ワオ」と静かに呟いて顔を赤くしている。ミサは驚いたような表情をしていた。
僕は何が起こっているのか分からず、フリーズする。
「何言ってるだーーーー!!!」
僕は思いっきり叫んだ。
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