031.アイスは別腹ってことで
暑すぎる夏の道。陽炎が周りの景色を揺らしている。
目的地がようやく見えてきた。白い小ぢんまりとした建物。2、3人、店の外で並んでいた。やはり人気店なんだな。
入口近くには簡易的な屋根が設置されていた。さらに、冷たい風を送ってくれる機械も置いてあり、待ち時間も快適だった。
「暑かったねー」
アオは服をパタパタさせた。僕も機械の送風口から動くことができない。
「そ、そうだなー」
待っている間、僕は店の前に置かれている看板を見た。可愛い絵と一緒にメニューが書かれている。
どれも美味しそう。見た目はもちろん、面白そうな商品もたくさんあるので悩んでしまう。
しかし、僕は急に汗がひいた。
「た、高いな……」
そう、値段である。1番安いもので550円だった。さすがは人気店。
店内を見ると、3畳ほどとかなり狭い。テイクアウト方式だった。しかし、インスタ用の撮影スペースが用意されていた。その影響で客もさらに多くなっているようだ。
ちらっと見えたアイスはとても美味しそうだった。たしかに映えだな。
チョコレートソースが絡み、フルーツが乗っている。女子受け抜群のアイスだ。
「うほー!!私これにするー!!」
アオは目をキラキラさせながらメニューを見ていた。指を刺していた先には『濃厚ショコラアイス』と書かれている。バニラアイスクリームに濃厚ショコラが乗っていて、チョコレートソースもかかっているという、チョコレート好きにはたまらないものだ。
たしかに美味しそう。
僕は委員長がお薦めしてくれた紫芋モンブランに決めた。
「いらっしゃいませー」
店内から1人の女性が出てきた。大学生くらいだ。僕たちは店内に入っていく。
「はあー、涼しい〜」
僕たちは声を合わせた。エアコンが涼しい〜。
僕たちはレジの前に向かった。
「ご注文は?」
「これと、これで」
僕はメニューを指差す。
「かしこまりましたー」
お金を払って、店内で少し待つ。白を基調とした内装に写真スポットがあって、オシャレだった。
「お待たせしましたー」
机に置かれたアイスはとてつもなく美味しそうだった。
「うわ〜!!」
アオの口からは思わず声が出ていた。
僕たちはアイスを持って外へ出た。人が少ない所に移動して、僕たちはアイスを食べる。
「いただきます……!!」
僕たちは声を合わせた。口の中へアイスを運ぶ。
僕たちは目を見開いた。そして、目を合わせる。
「おいしいーー!!」
次々に口の中へ運んでいく。委員長の言っていた通りだ。ほのかな甘みがクセになる、おいしい!
「ユウ君!!アイスって食べ物すごいね!冷たくて甘くて、おいしい!!幸せだよ〜!」
アオは満面の笑みだった。幸せそうな、幸せすぎて泣き出しそうなほどな、そんな顔だ。
その顔を見て僕も笑う。
きっと、さっきのアオの顔は忘れられないだろう。
「早く食べないと、溶けるよ!」
僕はアオのアイスを指差した。感動に浸るアオは手が止まってしまっている。
「本当?!やばいやばい」
僕たちは溶けないように早く食べ進めていく。
毎回毎回アオは満面の笑みを浮かべながら食べるので、アイスが溶けそうになっていた。その様子を見て僕は笑った。
「……はぁ、、美味しかったね〜」
僕たちは帰り道を二人並んで歩いていた。
「本当に、また行こう」
「またいくの??絶対行くー!」
アオは両手を上げて喜んだ。
「なんか、近くにクレープ屋さんもあるらしいからそこも行きたいね」
アイス屋さんと姉妹店があるらしい。そこがクレープ屋さんの様だ。
「く、クレープ……。なんか美味しそう!絶対おいしいよー」
アオはすぐ行きたそうな表情をしていた。
……次の行き先を決めるのって、楽しいな。
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