027.騙された〜
僕は勉強机に向かった。そして椅子に座る。アオは僕の隣に立って問題を覗いてきた。
こんなの、解けるわけない。僕だって、難しい問題を解いてきてるし、学年一位としてのプライドもある。それなのに、日本語覚えたてホヤホヤのアオに負けるなんて、許せない。
そんなことを思いながら僕は問題を見ていた。
「ふむふむー、これねー」
アオは僕の真横に顔を持ってきた。僕はつい反射的にアオの顔を見てしまった。
綺麗な横顔の輪郭。透明感ある白い肌。高い鼻すじ。ツヤのある髪。潤いあるエメラルドグリーンの瞳。
……きれいだと思ってしまった。
「ん?どうした?」
アオは垂れ下がった髪の毛を耳にかけた。僕とバッチリ目が合う。
「い、いやいや、何でもない」
僕は目線を逸らす。
「これはね……」
アオはシャーペンを持った。
「これとこれを、考えて、計算して、ここを求めてから……」
「ふむふむ」
──す、すごい。解けた。しかも分かりやすい。これ旧帝大の過去問だぞ!?
「な、なんで分かったの?」
「そりゃこれくらい。チョチョイのちょいよ!」
「す、すげぇ」
鼻を高くするアオに僕は感銘を受けていた。これが解けるなんて只者じゃない!
「どこでこんなの教わるの?人魚なのに」
「私たち人魚には学校はないけど、教科書はあるの。私は本を読むのが好きだったからよく勉強はしててね、それで知ってたってことね。
どうやら、人魚も人間もやる勉強は同じってことだね。
久しぶりだったなー。この問題。まさに80年ぶりだったよー」
「ええ?!!?!どういうこと?」
あまりの衝撃発言に、僕は耳を疑った。
「え?そのままの意味だよ?」
僕は困惑する。なんでこんなに平然とした顔でいられるんだ。
「……大変失礼なことをお聞きましますが、おいくつでいらっしゃいますか?」
「本当に失礼ね」
アオは顔を顰めた。その後、ため息をつきながら言った。
「ふつうに、200歳くらいだけど?もう数えるのめんどくさくなったから数えてないけど」
僕は開いた口が塞がらなかった。
「えっ?!めちゃくちゃお婆さん、いやおばぁ様じゃないですか!」
「失っ礼ね!!!これでもピッチピチなんですけどー!人生1000年時代だよ!今!」
アオは目を見開いている。
「そんなわけないじゃん!人間は人生100年時代なんだよ!!しかも、100歳まで生きれたら普通にすごいわ」
「えっ?」
アオは驚いた顔をした。
「じゃあ、ユウ君何歳なの?」
「今年で16だよ。高校一年生なんだから」
突然の沈黙。
アオはゆっくり後退りしていく。
「ええーーー!!!!ユウ君16歳だったの??若っ!!てか赤ちゃんじゃん。そりゃその問題解けないわ、てか解けるわけないじゃん!!」
「人間はこれが普通なの!」
今度はアオの口が塞がらない。
「……人間ってそういうところ本当よく変わってるよね」
「人魚がおかしいんだよ!」
「あー、騙されたわ。私。てっきり180歳くらいの少し年下かと思ってたわ。まさか、16だなんて。大誤算だよ」
「それはこっちのセリフだよ!まさか200歳越えのおばぁ様だったなんて!」
「だから、ほんっとに失礼ね。私は──……」
それからはずっとそんな会話をしている2人だった。
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