僕は社会のトップになる

NOTTI

第1話:就任決定 ①

 2022年秋、木郷賢治は緊張の1日を送っていた。


 その日はある会議のメンバー発表がされる日だったのだ。


 彼は以前から社会問題等に興味があり、定期的に彼の私見や提案などをネット上のページに投稿していて、その業界の関係者からも絶賛されることがある一般の人だ。


ただ、ある日を境に彼の社会からの影響力が増すことになる。


それは、彼のページに国会議員の外村恭志という与党第1党である日本党の幹事長という肩書きを持った人からメッセージが届いたのだ。


最初は何かの見間違いかと思ったが、メッセージを開いて見ると

“木郷さん、はじめまして。

日本党の幹事長の外村と申します。

私があなたの提案を見ていて、党内でただいま議論している内容とテーマに類似する部分が多く、是非取り入れたいと思う素晴らしい意見が多かったので、もし可能なら1度どこかでお時間を作っていただけませんか?

そして、大変恐縮なのですが、我が党の外部議員として是非お力をお貸しいただ毛増すと幸いです。

ご検討の程よろしくお願いいたします。

    日本党 幹事長 外村 恭志“


彼は読み終わった後も身体の震えが止まらなかった。


なぜなら、外村幹事長は党内で“絶対的存在”であり、若手議員にとっては“鬼の外村”と言われるほど恐れられてきた。


そのような人が無名の一般人である私の意見を絶賛してくれるというのは何物にも代えがたい光栄であり、自分の人生におけるチャンスが巡ってきたという考え方をするしかないと思ったのだ。


そのようなメッセージをメンバー発表前に見たことで、パソコンの前で内心ドキドキが止まらず、しきりに隣に座っている妻の彩月と目を合わせていた。


 そして、メンバーを発表するページが開けるようになり、そのタブをクリックするとメンバー一覧が出てきた。


 ゆっくりと下に向けながら自分の名前を探していると“木郷賢治”を見つけた。


 しかも、彼が選ばれたのは“総務委員”という全ての会議に出席するメンバーだ。


 彼は自分の名前を見つけた瞬間、今までのことが走馬灯のように脳内で浮かび上がってきた。


 彼が最初に出席する委員会というのは“国会討議検討委員会”という日本における社会問題等の課題や必要な対策や政策、法的事項など幅広い分野から国会で議論が必要と思われる内容を審議する場に提出する提案書を作成することや直接議員などの会合に出席し、その席で話し合われている内容で第三者の視点が必要になると思われるテーマについて国民目線で意見を出して、意思共有をすすめるなどいわば“国会議員の外部組織”とも言われるほど国会とは密接した連携を取る委員会だった。


そして、国に対して直接提案をすることが許されている委員会の1つで、メンバーは彼を含めて10名しかいない小規模委員会でもある。


 彼は当初なぜ自分が選ばれたのか分からなかった。


 なぜなら、選ばれている人の肩書きを見ると“厚生労働省労働衛生管理課課長補佐”や“日本経済団体連合理事”、“日本労働組合連合会役員”など各分野の専門家やベンチャー企業の外部役員など企業関係者であたりを見渡しても賢治のような一般の人は賢治以外いなかったのだ。


 彼は何の肩書きもない自分が専門家の人たちに交じって参加することに対して与えられた重責次第に恐怖を感じてきたが、与えられた役割を全うしたいと考えていた。


 彼はここから新たな人生の1ページが始まることになるのだが、果たして彼にとってこのチャンスが吉と出るか、凶と出るか今後の実績をどのように作っていくのか、自分ができることは何かなど考えなくてはいけないことはたくさんある。


 ただ、自分が国民の代表として参加するからには自分の体験・経験を活かして出来る事を精一杯やっていかなくてはいけないと思った1日だった。

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