幕間
ビャコ王国での復讐を終えた夜、光真達は寄宿舎のエントランスに集まっており、四人の視線を浴びながらセンセイはにこやかな表情をしていた。
「皆さん、本日もお疲れ様でした。これで残るはリュイ王国のみとなりましたよ」
「遂に最後か……これで俺達の復讐は終わるわけだけど、それぞれの国の王や女王、更には王子や姫も殺してきたわけだし、俺達がそれぞれの国を治める王や女王にならないといけないよな」
「そうだな。別にそれは構わないが、国民達からの反発や主だった役職者達の選別などやらないといけない事はこれから多くなるな」
「そうですよね……でも、四人で相談をしながら協力していけば、一人でやろうとするよりは大丈夫そうだと思います」
「私も同感。同感なんだけど……センセイ、ここの寄宿舎って復讐を終わらせた後はどうするの?」
「ここは残しますよ。皆さんもそれぞれの国を行き来するための中継地点は欲しいと思いますし、わざわざ無くす理由もありませんから」
「そう、それなら良いけど……」
強佳が少し不安そうに言う中、光真は強佳の姿をチラリと見てからセンセイに視線を向けた。
「センセイ、ここを中継地点にして良いのはわかった。けど、俺達の復讐が終わった後、センセイはどうするんだ? それに、四つの大国の睨み合いを無くしてセンセイに得はあるのか?」
「光真君……」
「……そうですね。そろそろ話しても良いとは思いますが、それはリュイ王国での復讐を終えてからにしましょう。それに今は、皆さんの武器の進化についておさらいをした方が良いと思いますよ」
「武器の進化について……たしかに最後の一つという事は、確実に警戒心を強めてきますし、情報共有はしっかりとした方が良いのかも」
「……そうだな。でも、リュイ王国での復讐が終わったら絶対に話してくれよ、センセイ。少なくとも、今はセンセイの事を俺達は信じてるからな」
「はい、もちろんです」
センセイが微笑みながら答えた後に四人は頷き合い、光真が静かに口を開いた。
「それじゃあ最初は俺だな。俺の長剣はこれまでの力に加えて、魔力を乗せた斬撃を飛ばせるようになったみたいだ」
「魔力を乗せた斬撃……そういえば、一度練習しているところを見せてもらいましたね。たしか魔法を唱えながら長剣を振るう事で、その魔法に対応した魔力が剣に宿って、それが斬撃となって飛ぶんですよね?」
「そうみたいだ。因みに、攻撃魔法だけじゃなく回復魔法や補助魔法でも斬撃に乗せる事は出来るみたいで、回復魔法の場合は相手を傷つけずに回復させてくれる感じで、補助魔法はダメージと一緒にその魔法が効力を発揮してくれるみたいだ」
「なるほど……その長剣の魔法を受け止めて吸収する力をうまく活用した感じの進化みたいね」
「そういう事になるな。それじゃあ次は真言、お願いしても良いか?」
「はい」
光真の言葉にその隣に立っていた真言が頷く。
「ビャコ王国での戦いの際にもう見せているんですが、私の棘鞭は地面に赤い棘を生やした白い茨を出現させる事が出来るようになっていて、そで相手を捕まえた後に強い力で縛り上げたり棘に宿った毒などを刺して注入する事が出来ますよ」
「その力は俺達にとっては頼もしい限りだが、相手にとっては非常に厄介だな。事前情報があってもそもそも茨を出現させているかは真言にしかわからず、棘には何も宿さないといった事も出来るようだからな」
「そうですね。そして茨の制御は私にしか出来ませんし、私が解除するか茨の耐久力よりも強い力で壊そうとするしか抜け出せませんから、相手を縛り上げた状態で光真君や強佳ちゃんが攻撃魔法で集中攻撃をするという事も出来ますよ」
「私達が威力を抑える事で、じわじわ相手を苦しめられるわけだからね。そういえば、アンタは相手を苦しめながら殺したり苦しんでるところを見たりするのが本当は嫌だって言ってたけど、アンタ的にこの進化はどうなの?」
「……あそこでも話しましたが、私にとって一番憎い両親と同じ事をしているようで本音を言うなら非常に嫌です。けれど、そういった事で快感や優越感を感じるようになったのはまた事実なのでそれはそれで受け入れます。そもそも復讐さえ終わってしまえば、後はそういった事をする機会だってそうそうあるわけではないですし」
「そうならない事が一番だからな。さて、それでは次に俺が話そう」
頷いていた敦史が話を始める。
「俺のボウガンも少し進化していて、これまでの必中以外にも矢を当てた相手の体を変化させたり相手の中の欲望を高めたりする力を得たようだ」
「ああ。そういえば、ビャコ王国でも矢を当てた箇所を腐らせていたっけな。他にはどんな変化をさせられるんだ?」
「他にはその部分に火傷や凍傷を与えたり一ヶ所限定にはなるがその部分を俺の意のままに操ったり出来るみたいだ」
「なるほど。それで、相手の欲望を高めるというのは……?」
「食欲や性欲といった三大欲求のみならず支配欲や物欲など当てた相手の中にある様々な欲望を刺激して、それだけしか考えられないように出来るようだ。
だから、俺の拒絶創造とはまた違った形で仲間割れもさせられるし、三人の補助の手段がまた増えた事になるな」
「光真と真言が攻撃と補助の両方が出来るのに対して敦史は補助に特化した形になるわね。それじゃあ最後は私が話すわ」
そう言った後、強化は三人を見回してから話し始めた。
「私の杖だけど、これまでの魔力を使わずに魔法を使えたり倍以上の威力で使えたりするのは変わらないけど、杖の先に魔法を一つキープした上で他の魔法を使えるようになったみたい」
「杖の先に魔法を……そのキープした魔法っていつでも使えるようになるのか?」
「そういう事ね。例えば、炎の魔法をキープした状態で雷や氷の魔法を使って相手に攻撃して、止めとしてキープした炎の魔法を使って最後に攻撃するとかこっそりいずれかの攻撃魔法をキープしておいて、相手からの攻撃を受けて窮地に立たされた時の反撃として使う事も出来るみたいよ」
「汎用性は高いみたいだな。だが、その魔法を剣や斧の形にして武器のように扱うのは出来ないのか」
「そこまでは出来ないみたい。だから、私も後衛特化にはなってるけど、私がピンチだからといってすぐに来なくても自分で反撃してピンチから抜け出す事は出来るからそこは安心して良いわ」
「わかった。ところでセンセイ、俺達の能力や武器ってこれからも俺達の成長に応じて強化されていくのか?」
光真の問いかけにセンセイは微笑みながら頷く。
「はい。言ってみれば、皆さんの武器も能力も皆さんの分身のような物なので、皆さんが能力や武器を使い続けたり皆さん自身が様々な経験をして成長したりする事で能力や武器も更に強くなり、新たな力を得ていきます。
なので、皆さんもその力に溺れる事無く、自分自身を成長させていってください。力に溺れたら最後、皆さんは力に囚われた醜い獣へと姿を変えてしまいますから」
「……そうだな。俺達の力は一人一人が本当に国一つを簡単に滅ぼせるくらいではあるし、これからもお互いに注意し合いながら頑張っていこう。復讐を果たした後も俺達は協力しながら頑張っていくしかないからな」
光真のその言葉に三人が頷き、四人が静かに見つめ合いながら最後の大国であるリュイ王国での復讐劇へ向けてやる気を高める中、センセイはそれを静かに見つめた後、こちらに視線を移した。
「……そろそろ、ですね」
そんな小さな言葉がセンセイの口から漏れた後、センセイは再び光真達へと視線を移した。
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