幕間
魔王ルトの城から帰還した夜、強佳の自室には二人の人物の姿があった。一人は部屋の持ち主である強佳であり、もう一人は仲間の一人の敦史だったが、二人は衣服を何も身に纏っておらず、汗と体液にまみれた敦史がベッドに腰かける中で仰向けで胸元の辺りまで毛布を掛けた強佳は同じく汗と体液にまみれた状態で息を荒くしながら額に手を当てていた。
「はあ、はあ……アンタ、本当に私と相性が良いのかしらね。初めは私の能力の実験のためにこんな事を始めたのに、今ではこうしたいとお互いに求めるようになっちゃったし……」
「……そうだな。だが、強佳とのこの一時は本当に幸せだ。これまで経験はまったくなかったが、強佳のその体を抱き締め、口づけ等を交わす度に心が踊り、これ以上ない程の幸福感を感じるからな」
「……悔しいけど同感。ただ、向こうは純粋にお互いの欲求のためにしか感じてなさそうだけど」
強佳は軽く体を起こすと壁の向こうに視線を向ける。壁の向こうからは少女の幸せそうな嬌声と少年の楽しそうな声が聞こえており、強佳は小さく溜め息をついた。
「魔王ルトの城にいた時は本当に悔しそうだったのに、すぐこうなるんだから……やれやれ、本当にお盛んだこと」
「さっきまで俺達も同じ事をしていたからあまり言えないけどな。それで、例の件だが……」
「……センセイが信用出来るかどうか、よね。少なくとも、私達は出来る出来ないじゃなく、今のとこはするしかないって事にしていて、あの二人は信用している感じだった」
「たしかにセンセイが力やこの拠点をくれたおかげで俺達は着々と復讐を果たすための準備を進める事が出来ているし、魔王達が持っていた力まで手に入れた。その上、魔物達の姿まで無くなったのだから、俺達の復讐を邪魔する奴がいるとしたら、後はアイツら自身やアイツらの内の誰かを勇者だと信じて止まない連中くらいになるな」
「本当の勇者も魔王と一緒に死んだんだけどね。そして復讐を果たす順番も相談して決めた結果、まずは私が飛ばされてきたクスザ王国からになって、復讐はそれぞれ五日間かけて行う事にもなった。私からになってなんだか申し訳ないけどね」
「相談して決めた事だ。それに、光真のようにもっと様々な力を手に入れた上でやりたいという意見もあったから、先に終わらせた分、残りの復讐に対して全力で取り組んでくれたらそれでいい」
「ええ、もちろんそのつもりよ。アイツら、いつも私の事をちびっこだの女として魅力がないだの言ってバカにしてきた上にあの時だってあそこの姫と一緒になって無能力な上に兵士達の慰み物にすらならなそうだって言ってきたから、あんな態度を取った事をちゃんと悔やませてやるんだから……!」
強佳が怒りを露にしながら拳を固く握っていると、敦史はふうと息をついてからその体を後ろから静かに抱き締めた。
「俺は強佳の事を魅力的だと思っている。一般的には未成熟な体つきに見えるが、そういう相手が好きなのではなく、強佳だからこそ良いと俺は思っているぞ」
「……ありがと。とりあえずセンセイが信用出来るかどうかは魔王城でも話したように全員の復讐が済んでからちゃんと考えた方が良さそうね。力や拠点をくれた事については感謝はしてるし、現状はアンタ達くらいしか信じられる人もいないわけだし」
「そうだな。そしてそれぞれの王国をこの手に納め、それぞれが王や女王となった後も良好な関係でいたいものだが、その時になったらセンセイはどうするのだろうな」
「私達を手伝ってくれるのは、この世界の仕組みが嫌いだからで、四つの大国がそれぞれ睨みを効かせて牽制し合っているこの状況を壊したいからだって言ってたけど、たしかにそれを達成した後はどうする気なのかは聞いてないのよね。
それに恩義を盾にして私や真言に肉体関係を迫ってきた事もないし、そういうのには興味がない上に私達を利用したいだけってわけでもなさそうだった。そもそもどこの出身でこれまで何をしてきたのかさえ何も話してないしね……」
「俺達にセンセイと呼ばせたり本当に教師らしい事をしてきたりするところから考えるなら、以前はどこかで実際に教師をしていたのかもしれないが、それに関しても正確なところはわからないな。聞いたところで簡単には教えてくれるわけでもないだろうしな」
「そうね。だけど、出来るなら復讐が終わった後もセンセイとは良好な関係を続けていきたいところね。一度感じたあのすごく冷たくて怖い雰囲気から確実に私達なんかよりも強い力を持っている上にいざとなったら私達なんてすぐに切り捨てる程の切り替えの速さはあるだろうし、何か私達じゃ力が及ばないような何かが出てきたら力を貸してもらいたいから」
「同感だな。そこに関しては光真と真言も意見が一致するだろう」
強佳の言葉に敦史が同意していると、壁の向こうから聞こえていた声は止み、それからすぐに甘えたような真言の声とそれに答える光真の声が聞こえ始めた。
「アイツら、私達がこんな話をしてる中でずっとヤってたのね。まあ、一段落ついているし、今は寝る前の個人個人の時間だから別に問題はないんだけど」
「二人の頭の中にはお互いの体を求める事と復讐の事しかないからな。黒亀老スノーや魔王ルトの言葉にはまったく心も動かず、センセイに対しての疑念などもないならそれも仕方ないだろう。あちらもお互いに相性は良いのだろうからな」
「相性は良くても真言が向ける光真への愛は純愛と言うよりは狂愛って感じだけどね。アイツ、普段はおどおどしてるけど、光真に対しては若干ヤンデレ的なところあるし、なんだったら性質的にはドSな感じだし」
「光真もそれを承知の上で真言との関係は続けているし、俺に自慢もしてくるからな。アイツらが幸せならそれでいいだろう」
「まあ、たしかにね。さてと……明日からは復讐も始まるわけだし、私達はそろそろ……」
強佳がそう言ったその時、敦史は強佳を抱き締める力を強くし、手を胸部へ静かに移動させていると、強佳は自身の腰辺りに感じる感触に溜め息をつく。
「アンタ、まだ足りないの?」
「申し訳ないがな。強佳の事は何度求めても足りないくらい魅力的だと思っているし、話しながら休憩をした事で体力も回復したんだ」
「……アンタも大概自分の欲求に対して正直よね。でも、さっきから抱き締められてて幸せな気持ちだったのは私も同じだったし、段々その気になってはきたから、もう少しだけなら付き合ったげるわ」
「ああ、ありがとう。強佳」
「どういたしまして」
強佳が答えた後、向き合った二人は静かに口づけを交わし合い、二人の部屋からはしばらくの間、幸せそうな二人の声が聞こえ続けた。
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