第37話 認める戦士 認めない戦士
暴走するクローンザーガ、それに対して鈴静とゴアドは背中を合わせ自身の持つ武器で蹴散らして行く。
「相手は僕達よりも身体能力は高いはずです。しかしその戦闘力を生かし切れていない」
「そりゃそうだ。あいつら思考は敵を倒すことでいっぱい。戦術すらない奴らに負けれるかよ」
叫びを上げながら単純に突っ込んでくる戦士達に竜神の戦士の〈カオスグリフォン〉による連続突きが次々と貫通して行く。
「お前達はここで終わりだ!」
漆黒の槍を逆手に持ちクローンザーガ達に向かって投げる。
すると高速で飛んで行く〈カオスグリフォン〉
まるでゴアドに従う幻獣の如く敵を貫いていく。
心臓部貫かれ膝をついたクローンザーガ達を見て、チャンスと思った鈴静は剣を横に振るう。
次元の裂け目が開き、黒き光の刃が無数に射出されそれがトドメの攻撃となった。
倒れ込む戦士達、その姿を確認し目を合わせた西前と鈴静は握手を交わす。
「あなたの戦えて本当に嬉しいです」
「あぁ、俺もだ。これからもよろしく頼む」
すべてのクローンザーガの撃破を確認した幕昰は工場の情報を共有するため、光炎に連絡を入れる。
『もしもし、光炎です』
「幕昰だ。堕天使達がクローン研究をしている施設を発見した。悪いが俺のスマホのGPSを探知してこちらに来てくれないか?」
大先輩のお願いに彼女は断れるわけがない。
如鬼の様子を確認した
『分かりました。すぐに向かいます』
「頼むぞ。あとサプライズも用意してるから待っていてくれ。じゃあまたあとで」
通話を切りホッとしため息を吐く幕昰。
こうして彼らの戦いは一旦幕を閉じた。
しばらくして到着した
警察官達がビルへ調査に入って行くと、如鬼と光炎は幕昰と戦士達に敬礼する。
ボロボロな彼らの姿にこの場所での戦いが激しいものだったことが分かる。
「皆さん。本当にお疲れ様です」
全員の生存を確認すると、涙を堪えながら光炎が微笑む。
「光炎くん、如鬼くん、君達にサプライズがあると言った。それは彼に会ってもらうためだ」
「彼って?」
幕昰のサプライズと言う言葉に気がかかりだった2人。
「鈴静くん。来てくれ」
そこに現れたのはかつて戦った堕天使で鈴静が洗脳され生み出された黒騎士、ブラックナイト・ダークエンジェルだった。
「光炎さん、如鬼さん、ただいま戻りました」
「鈴静……くん。なのよね? 本当にそうなのよね?」
「えぇ。
鈴静がその続きを言おうとした時「ウソをつかないでください!!」とボトボト涙を地面に落としながら、如鬼が叫びを上げる。
「私は……確かに鈴静さんを手にかけました……洗脳され堕天使になった鈴静さんを
「あれは………僕が悪いんです………」
彼の反省の発言、それに対して自分への怒りが爆発し如鬼は黒騎士の胸に頭を叩きつける。
「偽者は黙っていてください!! もっと早く洗脳を解く方法を見つけていれば! 鈴静は生きていられたんです! なのに! なのに私は!」
泣きじゃくりながら鈴静の胸を叩く彼女に鈴静は何も言えなかった。
人は死んだら2度と帰って来ない。
それなのに彼は帰ってきた。
クローン技術は誰かを幸せにするかもしれない。
しかし誰かを不幸にするかもしれない。
ヒサは改めてそう感じ、同時に自分を否定されているようで心が軋む音がした気がした。
偽りの存在に対して如鬼は再び胸を右手で叩こうとする。
すると光炎が彼女の腕を掴み止めた。
「いい加減にしなさい! 鈴静くんはたしかにあなたの手で倒された。でも彼がたとえ偽者だとしても、私は構わない。また一緒にいられるんだもの」
「光炎さん。如鬼さん。僕は急激な進化によって人間に戻ることはできません。でも、それでも………」
寂しげのある声を出す鈴静に、西前が割り込むように咳払いをする。
「人間に戻れる方法は1つある。堕天使の力を俺に渡してくれればより高みを目指せる。あんたは人間に戻れる。一石二鳥なわけだな」
「なんですって!?」
「声を荒げるなぁ。やり方を教えるから落ち着いてくれ」
鈴静の驚きの叫びに耳がキーンと成りながら、この前知ったやり方を教え始める。
「簡単なことだ。堕天使の力を俺に渡したい、そう思うだけでいい」
「わっ、分かりました」
半信半疑言われた通りにすると、堕天使の黒きオーラが西前の腕輪に吸収されて行く。
そして鈴静の姿が人間へと戻り、その光景に光炎はホッとした様子で肩を撫で下ろす。
「これで完全に堕天使の力は吸い出せた。それじゃあ俺はここで」
そう言ってその場を立ち去ろうとすると、ヒサが「待ってください!」と彼を呼び止める。
足を止めた西前は振り返らず、「うん?」と口にする。
「仲間としてこんな心強い人はいません。それにクローンである俺達を受け入れ認めてくれている。ゴアドさん、本当にありがとうございます」
「俺の堕天使を倒す使命とあんた達の戦う意思が重なっただけだ。だとしても仲間と言ってもらえて光栄だ。絶対に終わらせるぞ、この戦いを」
こうして1つの計画が正義の戦士達によって崩れ落ちた。
しかし超級堕天使のゼッツ率いるアームド・ ダークエンジェルの軍団が迫っている。
この戦いがどれほどの被害が出るのか、戦士達はまだ知らない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます