第3話 竜神の戦士

六問は如鬼に連れられ、基地である大型車、Zズートレーラーに乗り込む。


「チェンジソルジャーザーガ、まさか英雄と呼ばれるあなたに出会うなんて」


「英雄か。時代は進むもんだな」


彼女の皮肉を匂わせる発言に、勇ましき戦士である彼は表情を曇らせる。

そんな中コンピュータ画面を観つめた女性が話声に気付き回転イスを半回転させ、こちらへ歩み寄る。


「あなたが六問さんね。私はズートレーラーの司令担当でありズーシリーズの開発担当の光炎こうえんよ。よろしく」


「こちらこそ、よろしくお願いします光炎さん」


2人が挨拶を交わしていると如鬼は重いため息を吐きながら装着しているズースリーの背中部分にあるバッテリーを充電ユニットに接続する。

装着が解除されコンピュータによる自動操作で収納が開始、黒のスポーツインナーのまま頭部分から録画データが入ったSDカードを取り出し光炎に提出した。



「光炎さん、1ヶ月分の録画データです」


「如鬼、せっかくあの六問さんがいるんだからもっと遠慮をしなさい」


「別に、私はただ仕事を真っ当しているだけですから」


上司に冷たい視線を向けた後、車両の前側に向かって行く彼女の後ろ姿は六問に嫉妬している様に見えた。


「ごめんなさいね。悪い子じゃないんだけどぉ」


「いえいえ、それより堕天使を名乗るあの怪人、一体なんなんでしょう?」


手を合わせ謝る光炎に六問は苦笑しながら返事を返すと質問を投げ掛ける。


「えぇ、私達もまだ未知数なことばかりよ。でも分かっていることは、あなたが戦っていた怪人よりも格段に強くなっている。そして人間をとんでもなく恨んでいること。それぐらいしか分からないし今のズースリーでは如鬼の才能も活かせずに負けてしまうわ」


自分が寝ている間に兵器は進化している。

しかしそれを超えた存在である堕天使にどう対抗していくか、そんな考えを巡らせながら勇ましき戦士は彼女の真剣な眼差しに関心を覚えた。



時間が過ぎ夕日が落ちて行く。

子どもが公園から5時のチェイムで家に帰って行く中、白き仮面を付けた黒き羽根の装飾に身を包んだ堕天使が弓と矢を召喚する。


「種の繁栄は地球のリセットへの邪魔となる。ツボミは早々に摘み取らせてもらおう」


闇の力を矢に注ぎ、子ども達を狙い弓で放とうした。


「待ちなぁ」


後ろから聞こえてくる男の声を無視し、矢を放つ。

だが金色の装甲を纏った7本の角を持つ変わる戦士チェンジソルジャーが姿を表し、闇に包まれた矢を掴み潰した。


「お前は人間が生み出した戦士、ザーガではないな。………! 忌々しい神々の加護を受けている? 一体何者?」


「降り立つ堕天使から人間を守る。そんな神様のお願い事を聞き受けた人間が1人。ゴットアークドラゴン、訳してゴアド。どっちの呼び名でも良いが、冥界への片道切符、早く切らなきゃいけないでねぇ」


赤き複眼が敵の姿を捉え映し出すと、拳を強く握る。


「ホォー。神の力など、恐れる物か。の人間を頼る神なら尚更なおさらだ」


不敵に笑う堕天使、ブラックスワン・ダークエンジェルは高く跳び上がり浮遊しながら矢を召喚する。

弓で放つ矢をゴアドは淡々と右手で掴み潰し黒き槍を召喚、敵に向けて投げ付ける。

しかし地上からでは重力に逆らえず失速していく。

そう思われた次の瞬間槍先から赤き粒子を放出し始め、勢いが増した。


(これが神の加護。だが!)


堕天使の反応速度は人間を遥かに超えている。

残像が起きるほどの高速移動で槍を回避、矢を逆手に持ち接近戦に持ち込もうとする。


「俺が槍を放った理由。お前には理解できなかったみたいだな」


「そんな物! 勝てば関係ない!」


「じゃあ負けたら理由になるよなぁ!」


勝利を確信したゴアドの叫びに黒き槍が反応、突然クルクルと回転し始め方角をブラックスワン・ダークエンジェルに変え突っ込んで来た。


風を切る音に気が付いた頃にはもう遅い。

心臓部を貫かれ、風穴から血が噴き出し、左

手で塞ぐ。

槍を掴み血で両手を汚しながら黄金の変わる戦士チェンジソルジャーは左手にある金色の宝石が付いた黒き腕輪に収納する。

膝から崩れ落ちる堕天使にトドメを刺すため、背中に格納していた金に光る竜の翼を羽ばたかせた。


高く空を舞い、繰り出される必殺のドロップキック。

名はドラゴニックブレイク!!


「ホォォォォォォォォォ!!」


その一撃は再び心臓部に命中、大量の血が噴き出しながら大きく吹き飛ばされ、そのまま爆散した。


翼を格納し変身を解除すると、30代前半の男性が姿を表した。


「さて、帰るか」


そう一言言って男性は止めていたバイクに乗り込み、ヘルメットを被る。

そしてアクセルを回し、その場から姿を眩ますのだった。

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