第2話 元に劣る戦士
警察署前に到着した彼は知り合いに連絡を入れてもらうため、歩みを進める。
提示された書類に名前と自分がかつて住んでいたアパートの住所などを書き提出した。
順番を待っていると、小走りで1人の見知った男性刑事が近寄って来た。
「
驚いた様子で自分の名字を呼ぶ刑事の顔を見て、感激で勢いよく立ち上がる。
「お久しぶりです。
「ハハ。その感じ、偽者でないのは確かだな」
幕昰と呼ばれた男性はひと笑いし、疑っていたことがバカバカしく思えた。
幕昰竜吾、彼は怪人達と友に戦っている仲間の1人。
40代前半だが
「なんですかそれ? それより俺がいない間に何かありましたか?」
「あぁ。六問が怪人を全滅させた。その報告から1年。行方不明になったお前の戦闘データを元にあの惨劇を繰り返さぬよう、警察はパワードスーツ型の防衛兵器を試作しているそうだ。まあ俺は関わってないからこれ以上は知らんがな」
幕昰の言うパワードスーツがどれほどの物なのか。
そして怪人を全滅させたと言う覚えがないことに驚きで表情が歪みつつ六問は、これで良かったんだと一瞬で笑顔になる。
「なら良いんです。でも怪人達がまた出て来た時、俺は戦います」
「しかしなぁ。俺は怪人科から外されたんだよ。それでもお前の決意が硬いなら、上を説得して俺もまた入らせてもらえるよう努力する」
怪人科とは六問のサポートをしていた部署である。
現在は次の怪人による怪事件に備え対策を行なっている。
「もし一緒にまた戦えたら、その時はよろしくお願いします。相棒」
「あぁ、任せとけ。そう言えば六問、住む場所はあるのか? ないなら俺の家に来ればいい。これで寂しい思いをしないで済むからな。ガハハハ」
苦笑する幕昰、それを見た六問の「良いんですか!?」と思わせるキラキラした瞳。
そんな時だった。
『キャー!?』
女性の悲鳴に2人は首を縦に振り、そちらへ駆け急ぐ。
そこにいたのはティラノサウルスを彷彿とさせる爬虫類型の怪人。
黒光りした装飾を身につけ、背中には黒き小さな翼が生えている。
「金持ちと言う非平等の者は、私が
女性の首を右手で絞め持ち上げる怪人は
「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「うん?」
なんとか間に合った六問は左手首に腕輪を出現させ、右手でかざす。
電気を纏いながら怪人に殴り掛かり、そして勇ましき戦士に姿を変えた。
殴られ後退りし、思わず女性から手を離すと動揺を隠せないまま顎を戻し怪人は戦士に睨みを効かせ鉤爪を召喚する。
武器を装備し、戦闘体勢に入った。
「あなたが古代の人間が生み出した
「その言い方だとお前はあの怪人達とは違うと言いたげだな?」
ザーガと呼ばれた六問が質問すると、「フハハハ!!」と大声で笑った。
「我々は人間を全滅させるために下界して来た堕天使。ザーガ、あなたも含めてねぇ」
「堕天使だと? ふざけるな! 悪魔同然の奴らに負ける物か!」
お互いに戦闘体勢に入ると、悲鳴を上げながら尻もちを突いてしまう女性。
「大丈夫ですか!?」
ようやく駆けつけた幕昰は彼女を安全な場所へ誘導し、仲間を呼ぶためスマホを取り出した。
先手を取ったのは堕天使、鉤爪でザーガを引き裂くべく突っ込んで行く。
それに対して六問は研究室から脱出する際に鉄格子から吸収した鉄を棒状に変化し、過去に入手した金属で補強する。
繰り出される攻撃をことごとく躱し、カウンターの突きを胸に味合わせる。
それから棒を長く持ち、剣へと形を変えた。
持ち
だが炎をザーガは吸収し、刃に火炎を
「トリャー!」
振りかぶりそして振り下ろした。
が、剣先を右手で受け止められさらに中心から折られてしまった。
「人間にとってあなたは強者だ。それが我々にとっては許せないのです」
「別に強さに憧れてザーガになった訳じゃない。お前達の様な、人類の敵を倒すためになったんだ」
堕天使、ティラノサウルス・ダークエンジェルの発言に戦う理由を示すと、剣を再生させ一気に突っ込む。
そんな中警報を鳴り響かせながら武装を完備した白バイから降り、特殊な形状をしたサブマシンガン〈アーチャー〉を取り出す
『
「分かりました」
司令官の指示に従い視界部分に搭載されたスキャナーで堕天使の弱点を読み取ると、即座に頭を狙い射撃を開始する。
銃弾が全発頭に命中するも硬い鱗に阻まれ皮膚に届かない。
「なに?」
「耳障りで目障りだ。人間の強者ぁぁぁぁぁぁ!!」
標的を青き戦士に変えた瞬間、そのチャンスを見逃さずザーガは腕輪から右足裏に破壊のエネルギーを伝達させる。
高く跳び上がり繰り出される必殺の一撃!!
「オリヤァァァァァァァ!」
ドロップキックを背中に食らった堕天使は破壊のエネルギーを注入され、激痛と共に悲鳴を上げ爆散した。
着地したザーガを見た
「やめなさい
司令官の指示を聞き、攻撃を取りやめ銃を白バイに収納する。
変身を解除した彼、それに対して多少驚きながらも冷静さを保ち
正体は長い黒髪を後ろに結んだ20代前半の女性、六問は「君の戦い方、すごく良かったよぉ」と本気で高く評価しながら近づく。
「怪人を倒したのはあなたですし、お世辞として受け止めます。それより申し訳ないのですが、司令官の命令でご同行願います」
「えっ?」
彼女の冷たい視線と相まってまるで何か悪いことでもしたのかと自分を疑いつつ、連れられるがままこの場を後にするのだった。
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