第26話 犯罪奴隷エンド





 その後、バレオンを目的地まで連れて行き、私は馬車を停めた。

 目先には、私の動かしていたみすぼらしい馬車とは違い、何両にも連なった鉄格子が特徴的な長さのある馬車があった。

 そして、筋肉のあるガタイのいい男が、こちらに気が付き手を振った。


「よお、ノクタリア」


 彼は、私の知り合いの奴隷商。

 以前、私が制裁を下した王国奴隷商と違い、完全に私営をしている奴隷商だ。

 主に犯罪奴隷などを扱っており、不正な奴隷を持たないというポリシーを持っているため、私は何も手出しをしていない。


「ええ、久しぶりね。ケイ」


 私はケイに、バレオンの身柄を引き渡した。


「これがノクタリアの言ってた犯罪奴隷か。こいつは、どういう罪を犯したんだ?」


「脅迫、暴行、未成年者誘拐に……他にも、金銭絡みで色々とあるわ」


「なるほどなぁ。うっしゃ! なら、こいつは高値で買い取らせてもらうぜ」


 バレオンは、手首を縛られたまま何もできない。

 しかし、その絶望に満ちた瞳は確かにこちらに向けられていた。


「お、おいっ……! まさかとは思うが、お前……俺を、奴隷にするつもりか⁉︎」


 ……何を狼狽えているのだろう。

 散々他人を苦しめてきたのに、奴隷落ちするのがそんなに怖いのだろうか。

 こうして屋敷から連れ去られた時点で、これくらいの覚悟はできていたと思っていたが、


「か、金か? ……お前は金が欲しいのか? なら、望む額を……!」


 そして、金があればなんでも解決できると誤認している。

 本当に救いようがない屑だ。

 私はバレオンの脇腹を強く蹴り飛ばし、侮蔑の表情を浮かべた。


「何を……勘違いしているのかしら? 金が欲しいなら、今頃屋敷の方に身代金でも要求していたわ」


 そう、金なんてどうでもいい。

 この男には、今後の人生を一生奴隷として生きてもらう。

 それが、相応しい制裁であると感じたから、こうやって奴隷商に売っ払おうとしているだけのことだ。


「それに、貴方の築いてきた、その金とやら……それは、どれだけ多くの人を苦しめた上に成り立ったものなのかしらね。貴方には、きっと分からないでしょう」


 領民に重税を課し、巻き上げた資金を不正に流用し、豪遊三昧。

 臓器売買などにも手を出して、誰かの大事な人の命を簡単に奪っていった。

 そんな人間に、助かる道は必要ない。


「おめでとう。貴方は今日から晴れて、犯罪奴隷よ。厳しい労役がこれから待っていることでしょうね」


「……そん、な」


 地面に視線を落とし、バレオンはそれ以上の言葉を失った。

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