第18話 屑貴族
「おい、早くしろよ! なんで、酒の準備がまだなんだ!」
「も、申し訳ありません……!」
「たく、あんまり使えないと……お前、借金のカタにお前の息子を奴隷商に売っ払うからな!」
ドミトレスク子爵邸。
そこには、怒号が響いていた。
バレオン=フォン=ドミトレスク。
彼は、噂通りに最低最悪な性格の、屑貴族だった。
使用人の服を着た男を足の裏で踏み付けながら、現ドミトレスク子爵家の当主バレオンは、酒に酔ったように顔を赤らめながら、汚らしく唾を飛ばした。
「おい、分かってるのか?」
「申し訳ありません。どうか、息子だけはご勘弁ください……!」
「ふん、ならそれ相応の働きを見せろ」
「はい。かしこまりました」
屋敷内部の状況は、普通には確認できない。
屋敷の窓はカーテンに仕切られ、屋敷の光が外に漏れ出ているだけ。しかしながら、私には中の様子が手に取るように分かっていた。
何故か。
それは、私が……元聖女であり、あらゆる魔法を使いこなせる闇堕ち聖女だからだ。
部屋の中を透かして覗く程度、簡単にできる。
──それにしても、聞いていた通りの男ね。
聞いているだけで、はらわたが煮え繰り返るようだ。
弱者を虐げて当然というような態度が、私は一番嫌いだ。
「……これなら、私が制裁を下しても、心が痛くならない相手ね」
性格の破綻した貴族は、幾度となく見てきた。
そして、然るべき制裁を下してきた。
この男もまた、落とすべくして、落とす男となるだろう。
制裁を下すと決まれば、もうこの場所に用はない。
作戦を立てて、この男の処遇を検討するのみだ。
殺す方向で進めるか。
それとも、別の方向で苦しめるか。
制裁をするなら、この男がやってきた行為をそのまま、返還するのが最も相応しい。
重税に加えて、領民を脅して、粗暴な振る舞いを行う。
人々の声に耳を傾けず、自分勝手な行いを繰り返す。
「…………すぐに殺すのは、生温いかしらね」
──方向性は、ある程度決めた。
あとは、実行するための準備を整えるだけ。
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