第14話 リライト(神官視点)
「それで、その元神級聖女ノクタリアが闇堕ち聖女であった場合、どう対処する?」
最高神官の一人が呟いた一言によって、その場の騒めきは、一層大きくなった。
神級聖女だった者が、闇堕ち聖女と化していた場合、その動きを止めるどころか、抑止するのでさえ非常に難しい。
元神級聖女ノクタリアの場合。
聖属性魔法の他、数多くの魔法を習得し、使いこなしていた。
彼女の暴走を阻止するのなら、殺すことが一番手っ取り早いのだろうが、『殺してしまえばいい』と言い切れないほどに、強大な力を有している。
「並の聖女を派遣したところで、逆に殺されてしまうのが目に浮かぶわい」
「だが、このまま放置すれば、『上級国民』への被害が拡大する一方だ! そうなれば、王国の上層部から、色々言われるに決まっている」
「かといって、我々の保有している聖女たちを『上級国民』の護衛に回したところで、実際にノクタリアとの戦闘に発展してしまえば、聖女諸共、『上級国民』を殺される。対策の立てようがないじゃないか」
最高神官の中で、意見は中々固まらない。
強大な敵を前にして、どうしようもないという意見が大半だ。
そんな話の途中で、一人の最高神官が、スッと手を挙げる。
「……発言、よろしいですか?」
神官の中でも珍しい、女性神官だった。
彼女はその他最高神官を見回し、黙らせると、大きく息を吐いてから話し始めた。
「昨今の『光』の災害。並びに『上級国民』死亡、失踪事件に、対して、私も色々と思うところがありました。なので、上級聖女だけで固めた精鋭部隊を新しく編成しました」
彼女が何か合図をすると、講堂の扉が開かれる。
そして、外からは三人の聖女が入り込んできた。
「上位聖女のみで編成した部隊『リライト』の聖女たちです。三人とも、ご挨拶をなさい」
聖女たちは、順々に最高神官のいる方向に向けて頭を下げた。
「一級聖女、ピエリですわ」
「準一級聖女のルナです」
「……準一級聖女、セレンでございます」
三人の端的な自己紹介が終わると、女性神官は、再び口を動かす。
「ご覧の通り、準一級聖女以上の上位聖女のみで編成されており、強大な闇堕ち聖女への対抗勢力として、十分に戦えるかと思われます。神官の皆様、いかがでしょうか?」
『リライト』
後にそれは、神聖統一教会の切り札となる存在となる。
「他神官の皆様の保有している上位聖女の皆様にも、『リライト』への参加を進言致します」
『リライト』を発足させたのは、最高神官の中では珍しい女性神官。
しかしながら、他の神官たちも、彼女の案に賛同するしかなかった。
それ以外に、元神級聖女ノクタリアに対抗する術を、持ち合わせている者がいなかったから。
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