次章への宣戦布告
「とまあ、これが事の顛末だったわけだ。この町に流天の剣女が潜んでるのは明確になったろ? すっかり崩壊しちまった怪異屋敷がその証拠さ」
男——
轟々と言う駆動音は静かな空間に緊張感を与えていた。にもかかわらず奏は飄々と話し続ける。
「御一行が鳥籠から出て行く様も、オレの部下が確認済みだ。写真もある。これで裏付けは取れたろ? パーにしてくれるよなア前の失敗は」
奏の前にいた茶髪の青年は眉をしかめて写真を確認し、意見を発する。
「これも独断だろ奏。余計な行動は慎むようにと言ったはずだ!」
「そうきゃっきゃすんなよ
「だが、それでもお前の行動は看過できない!」
立ち上がり糾弾する、辰磨という青年を、奏は落ち着き払ったまま眺めた。
「まだ若いんだからさ、あまり怒りすぎるのも身体に悪いぜ?」
「傭兵風情が……!」
「辰磨クンよりは長い」
二人の間に割って入るように女が声を発した。
「五月蠅いです」
今にも掴みかからんとする辰磨だったが、清廉な声に自ら腕を止めたのだった。彼女はすっと起き上がると巨大なケースを背負い、降車口へ一人歩いていった。
「降下地点ですので、いつも通り先行します。お二人とも、今は今の任務に頭を使うべきです。雑念が連携を崩すなど、あってはならないので」
そう言い残し、彼女は空の下へと飛び込んでいった。扉が閉じられると同時に奏は笑い飛ばした。
「
「お前……!」
一歩踏み出す辰磨の腕を、金髪の男が掴まえた。
「黙れ、
「っ、すみません……」
若干の怒気が孕む声に青年は必死に腰を折った。そして静々と席に着く姿を奏は満足げに眺め、顔を「隊長」と呼んだ男に向けた。
「まあともかくだ。これでようやくのリベンジマッチ……今度の勝ち筋はありますかね?
金髪の男はぴくりとも動かない。静かに目を閉じ、数秒瞑想する。
「我らは、『
隣に座る辰磨は膝の上の拳を震えさせる。奏は交響曲でも聞くようにやわりと頷く。そして、神室は力強く口にする。
「流天の剣女は——我が取り返す」
神室が鉄の仮面を装着したのを合図に、三人は降車口へ歩いていった。
————次は、『
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