佐々木迷宮-蒐
謎解き。パズル。ピース。
あと一片。
この佐々木家……否。迷宮を中心にした一連の事件。近衛槙が感情的になりすぎたが故に見つけられなかった、至極どうでもいい謎が一つ。
佐々木和俊と佐々木瑠璃の契約。姉は眠り意識も無かったはずなのに、弟は彼女と契約を交わしたと言う。当初は生者との接触がキーとなり意識が戻ったのだと仮定したが、それは違っていた。
佐々木瑠璃は、何とも契約などしていない。
では和俊氏は何と契約を交わしたのか?
「———起きや」
目覚めを促す。グンと、重圧がのしかかる。佐々木家の扉、窓、あらゆる隙間が開き、中からは数多の腕が伸びてくる。
佐々木迷宮。その正体は佐々木瑠璃の静寂が生んだ永遠の鳥かご……である以上に。
長年に渡って未練が沁みついた、この家屋そのものだ。
和俊氏が契約したのは、この建物そのものだったというわけである。
『———!?』
二階の窓から少女が。あれこそ佐々木瑠璃。少しの間だけ保護しなければならないため、彼女もまた、蒐集対象だ。
「おいでやおいで。紙芝居の時間だよ」
まるで滝のよう。嘔吐のよう。一軒家が窓から肉の渦を延々と吐き出し続けている。
どばどば、ぐしゃぐしゃ、びちゃびちゃ。
この手足は連れていかれた人たちだ……と近衛槙は言っていたが少し惜しい。霊的なモノは、記録の残滓。記録は、何度でも複製できる。だからこの不気味な肉の蛆虫たちも、この家の所有物だ。
さて、そろそろだ。
「これにてお終い。めでたしめでたし———」
手帳をパタンと閉じる。また一篇、新たな不可思議が蒐集された。
僕は「お話屋」。または、「蒐集屋」。
次の舞台は「海の玉並べ」。
深海、新開、神階の砂浜で、またお逢いしましょう———。
※ここまでお読みいただきありがとうございました。よかったら応援やフォローなどしていただけたら幸いです。
次回の「海の玉並べ」もどうぞお読みください。
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