後から論理武装をするな
Q.反響が振るわない、読者に読まれない、いまいちランキングに載り切らない――そんな順調じゃないとき、陥りがちなミスとは何でしょうか?
A.後から論理武装をすることです。
今回のテーマはちょっと方法論から外れるので、あくまで備忘として留めておいてください。
順調な作品が失速すること、これは誰にでもあることです。ランキングは時の運ですし、作品を読んでもらえるかどうかは、その時の読者のフィーリングが全てになります。
(極端なことを言うと、悪役貴族もののアニメが放送されたのでライト層がWEB小説投稿サイトにたくさんやってきて、悪役貴族ものの作品の読者が増える――みたいに環境起因の要素があります。作品に全てを求めることはできません)
ある程度の傾向を読むことはできるし、ある程度定石のようなものはあるとはいえ、「こうすれば読まれる!」と十把一絡げに論じるのは、間違った結論を導きがちで非常に危険です。
読まれた理由は、読まれたから。
読まれない理由は、読まれなかったから。
本当にただそれだけで、事実が全てです。そこに法則を見出そうとするなら、ちゃんと大きな母集団の傾向を捉えているか、局所的な話を無理に誇張してないか、などに気を払うべきです。
後から論理武装をすること。
これがその「局所的な話」になりやすく、間違った結論になりやすい代表例です。
「この作品は○○がコンセプトで、××という面白さがあって、△△がセールスポイントです」
伸び悩んでいる作品を書いているあなたは、上記をすらすら説明できるでしょうか。
「ちゃんと説明できる! だけど何故か人気が出ない!」
というあなた。
説明できるとして、それは直感でしょうか、それとも後からひねり出した論理武装でしょうか。
実は論理武装は簡単です。面白くない作品なんてそうそうないからです。人が真剣に書いているのだから、似た人に刺さるはずです。そこを論理で武装すれば、いくらでも論じられます。
すなわち、こんなに頑張りました、という後出しじゃんけんをいくらでもできるのです。
論理武装は、直感とズレることが多いです。
読者は、論理武装の芸術点の高さで作品を選ぶのではなく、インスピレーションで面白そうな作品を選びます。
もしあなたが真に作品を読んで欲しいのであれば、
「あ、これは読むわ」
「いやあこれは読まねえな!」
とあなたが直感的に感じた理由、その一点のみを分析してください。
一旦閑話。
論理武装は直感とズレる、という例は、世の中に山ほどあります。
その中でも、私が個人的にとても苦手なのは「何故、〇〇〇はこんなに大成功したか?」みたいな分析――それも作者本人や編集が分析してるのではなく創作の関係者じゃない第三者が分析している類のものです。
この手の分析で、もう本当に人生でいいものに巡り会えた試しがない。十個読み込んでためになる話が一つあればいい方です。良質なものがあればとても希少です。
それぐらいに私にマッチすることが少なかったです。
何故なんでしょうね……?
論理武装もないわけではないです。
例えば、
「仲間・友情・絆というテーマ(だからヒットした)」
みたいなやつですね。
実際のところ、仲間・友情・絆というテーマは万人受けしやすいし、感動に繋げられるいいテーマだと思います。否定はしません。
しかし直感的に、
「う、嘘くせ~~~~~~~~!!」
ってなります。
本当、何故なんでしょうね……? 私が偏屈なだけかもしれません……。
おいテメー、本当に〇〇〇読むとき「あーあ、今日は仲間・友情・絆がテーマの作品を読みたい気分だなー!」って思って読んだのかよ! って聞きたくなります。
「なんかめっちゃ売れてるから」とか「〇〇〇〇がすげーTLに流れてて興味持った」とか「〇〇〇〇〇編がガチで面白いって聞いたから」とか、そういう理由の方がまだ納得できます。
「仲間・友情・絆というテーマだから大ヒットしたんです!」
って実は分析でもなんでもない(テーマでヒットしやすいかどうか勝手に判断するのは分析に至っていない)と思いますが
「なるほど!」
とその分析を鵜呑みにしてしまうのは少々危険です(「仲間・友情・絆」に関しては、DEATH NOTEとか攻殻機動隊とか、すぐに反例が思いつきますね)
閑話休題。
では本筋に戻って、「直感的に読まれる」作品を書くにはどうすればいいでしょうか。
繰り返しになりますが、
「あ、これは読むわ」
「いやあこれは読まねえな!」
とあなたが直感的に感じた理由、その一点のみを分析してください。
一例として、私の手元にある
・読もうと思った理由メモ
・読むのを辞めた理由メモ
を公開します。(作品名はもちろん伏せます!)
(一例)
・読もうと思った理由:
ちょうどジャンプ+で読みたい作品を全部読み終わってて、何か暇だし面白そうな作品ないかなーとカクヨムを探して、ちょうどタイトルを見た瞬間「ふうん、王道の異世界ものっぽいし、外れ職業ものをちょうど読みたかった気分だし、ガンガン伸びていく成長チート感あるなあ」と思って手を出した
・読むのを辞めた理由:
単純に長くてちょっとダレた
読もうと思った理由が非常に多く、読むのを辞めた理由がすごく簡潔なのに気付いたかもしれません。
これは私の勝手な先入観からこうしてます。
「読もうと思う理由は、事細かに分析してヒントにするぞー!」という気持ちと、「お客様は気まぐれだからな……辞めた理由は気まぐれでいいんだよ……」という気持ちがここに現れています。
読むのを辞めた理由の分析の方が難しいです。変に突き詰めようとすると絶対に"間違った結論"に陥る気がします。
少なくとも私はそう思っています。
そう、繰り返しますがこの2点が全てです。
読もうと思った理由を拾い出して、自分の物語の序盤に思いっきり詰め込んでください。
読むのを辞めた理由を噛みしめて、自分の物語の中から頑張って排除してください。
……。
…………。
最後におまけで、私個人の「・読もうと思った理由」の方のメモをもう少しだけ公開します。
・読もうと思った理由:
バルンバルン
貞操逆転
変態
……読んじゃうよね!
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