第4話心が一つになるって青春(笑)
二学期初日9月1日(水)
「椎名さん!起きて、今日から学校!!」
「うーん、ギリギリまで寝るぅ〜」
時刻は午前7時、我が校の登校時間は8時45分このアパート、ラフォーレ椿から学校までは徒歩10分早いと思うだろうがそうでもない、なんたって女の子は準備に時間かかるもの顔洗って、朝飯食べて、身だしなみ整えていたらあら不思議もう遅刻寸前なんてこともあるだろう。
そんな考えをしているのはあら不思議男の子の達也です。
「えぇい!とっとと起きろーーーーーーー!!」
「ふぁい!!」
そんなこんなで同居生活初日、引っ越しは帰ってからだがスタートしたのである。
「ほら顔洗って目覚まして!朝ごはんは軽めに作ったからお昼から引越し作業もあるんだからシャッキとする!」
「ママ〜」
「ママちゃうわ!!」
今朝は昨日うちに鍵を預かり朝アリアの部屋入ってきた達也だが寝起き悪さにびっくりである。このようなことは創作の中あるいは話を盛る友人たちの戯言だと本気で思っていた達也であるが今日だけで認識を改めたのは言うまでもない。
「椎名さんは食べられない物とかある?極力避けようと思うけど?」
「………」
「椎名さん?起きてる?」
「……アリア」
「えっと…アリアさん?」
「ア・リ・ア」
「…アリア」
満足そうに朝食に戻るアリア、この女顔はいいので免疫ゼロの達也には名前呼びはハードルが高いのである。だが思い出す!この女、女子力ゼロである。
「好き嫌いはないわ…厳しく躾けられたから」
「そうっすか…(じゃあなんであんな惨状になった)」
疑問に思っても口にはしないこの二人まともに話し始めてまだ数日の間柄、いかに達也が接客業でコミュ力をあげようと今の状況で出来ようはずがなかった。
「食べ終わったら歯磨いて着替えてね」
「ごちそうさま!わかってるわ!」
洗面台に向かうアリアを見送り、準備のために自分の部屋に戻る。
さて時刻は8時10分少し早いが出ることにした達也がアリアの部屋のインターホンを鳴らすが反応がない。
ピンポーン…ピンポーン、ピンポン!ピンポン!
「でない……」
嫌な予感がした達也はドアを開け、部屋の前に立つ。
「ア…椎名さん!!もう出るよ準備出来てる?」
反応なし、名前を呼びかけてひよって椎名さんになったのは純情男子の達也にしょうがないことである。多めに見てやってほしい。
「すぴー…すぴー…」
「おい…」
二度寝してました。認識を改めた達也だったがどうやら甘かったようだ朝に強い海堂家ではまずありえない光景に怒りが込み上げてくる。
「なに寝てやがる。起きろ椎名さん!」
「椎名さんはママもパパもです。それじゃあ誰だか分かりましぇ〜ん」
「いいから起きろーーーーアリアーーーー!!」
「ふぁいっ!!」
まだ寝ぼけ眼なアリアだが大ボリュームの前に体を起こすことまでは出来た。
「うーん」
バイザイするアリアとポカンとする達也、アリアがなにを求めているかそれは……。
「着替えさせて?」
無言で固まる達也だがフリーズは一瞬ですぐさま袖口を掴む……
……………………
……………
……
…
そして
……………………
…………
……
…
一本背負いが決まった。
「あべしっ!!」
「さっさと着替えてこいや!!」
さて時刻は8時25分まだ余裕がある。15分前行動が染み付いている達也にとってはヒヤヒヤな時間である。そして制服のアリアが部屋から出てきた。
しかしその頭はボサボサである。
「髪とかして!!ひどいから!!」
「行きながら手櫛でなんとか……」
「椅子に座りない!せめて少しでも梳かすから!」
はい、そんなこんなで時刻は8時38分、急がないと遅刻が確定した。
「急ぐよ!!」
「待って!すぐ行く!」
走る。ひたすら走る。周りを見れば同じように息を切らす者もすでに悟りを開き足掻かない者とで極端に分かれていた。
「ほら!早く!」
達也はアリアの手を取りとにかく急ぐ、当のアリアは船を漕いでいるがそんなのは達也には関係がなかった。
時刻は8時44分、2人の現在地は校門を過ぎ下駄箱に差し掛かった。アリアの靴箱の分からなかった達也は自分の靴箱にアリアの靴も突っ込み教室を目指すが無常にも本鈴が鳴り響く、ここはまだ先生が来てないかもなどと淡い期待をするのだろうが我らが担任は予鈴が鳴ったらすぐに来る。
「すみません、遅れました!!」
アリアの手を引いてやってきた達也をクラス全員ギョッとして見つめた。が先生だけは冷静だった。
「海堂!お前が来てないと思ったら椎名の世話してたのか!今回は遅刻つけないからな!だが椎名は遅刻だ」
「ありがとうございます」
「うーー」
クラス全員気持ちは一致したであろう。
(日頃の行いは大事だな)
本日は始業式のみである。アリアの引越し作業があるので終わり次第ささっと帰りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます