あの日から、貴方のトリコ。

ふゆさん

第1話 先生との出会い

「アンタ、またこんな点取って!まったく!」


母が、カバンの奥の方にぐちゃぐちゃにしてあった(いや、正確には隠していたとも言う)数学のテストを見て、ため息と呆れ果てた声で喚いている。


アメリカだったら、「オーマイガー!」ってな感じだろう。


私はナツミ。中学1年生だ。

全てにおいて「中ぐらい」だ。容姿も、成績も。

ただ、壊滅的に数学だけは「下の下」だ。

ゲッ、ゲッ、ゲゲゲのゲ〜だ。


友達は多い方ではなかったが、少なくもなかった。

当時から、人間関係においては狭く深く、だった気がする。


そんな、数少ない私の友達であるハルカが、壊滅的に数学が苦手な私を見かねて、「私さ、塾通ってるんだ。よかったら、遊びに来ない?先生もめっちゃ優しいし。通うかどうかは考えなくていいからさ、遊びにおいでよ!」と声を掛けてくれた。


まぁ、そんなこんなで、ハルカが通っている塾に遊びに行くことになった。

何だかドキドキ。え、変な勧誘とかされないかな。ドキドキ…


塾に遊びに行くと、出迎えてくれたのは20代後半くらいの、目がクリッとした、彫りの深い顔立ちの先生だった。偶然にも、私が苦手な数学担当。

どうか、私の成績には触れないでくれ、、


「こんにちは。ハルカちゃんから聞いてるよ。数学が苦手なんだってね?ふふ、大丈夫大丈夫、ゆっくりしていってよ」


何だよ、コイツ早速私のこと話してたのか、チックショー!

恨めしい顔でチラリとハルカを見る。

気分はコウメ太夫だった。


その先生のことを、K先生としよう。


K先生は、声が特徴的で、どこかフリーザに似ていた。1度聞けば印象に残るであろう声。

あれ、私フリーザと話してる?と錯覚してしまう。


K先生は、優しくて、面白くて、生徒たちからも人気があるのだとハルカが言っていた。

うんうん、確かにそうだろうな。

かっこいいし。


それから、ハルカがいない時にも、たまに塾に遊びに行くようになった。

塾生でもないのに変な話だが、K先生の好意に甘えていたのだと思う。

今思えば、入塾させるための「好意」だったのか?


私とK先生の出会いは、ハルカが仲介してくれたようなものだ。

ハルカにとっては、何の策略もなかっただろう。

ただ、壊滅的に数学が苦手な私を、ハルカの良心でK先生に繋げてくれた。

それだけのはずだった。


そんなこんなで、私とK先生は出会ってしまったわけだ。


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