アミから侑子へ②

ユーコちゃん



 ずっと返事が書けないままだった。申し訳ない。


 ユウキからも聞いていると思うけど、親族に不幸があってね。しばらく帰れない日が続いたんだ。


 沢山の資料をありがとう。

そちらの世界の『昭和』時代には、大きな戦争があったんだね。

 以前送ってくれた世界史年表と照らし合わせてみた。興味深いな。

人類の歴史が戦争の歴史であることは、此方もそちらも変わらないようだ。覇権がどの国、どの地域に渡るかによって、その他の国が被る影響が微妙に変わってくるだけだ。

 魔法の存在しない世界の戦争とは、どのようなものなのだろう。核爆弾とは? 聞き慣れない名前だった。ニホンが唯一の被爆国とは……気になった。



 ユウキからあまり怖い話を書くなと念押しされているんだ。だけどユーコちゃんは、隠されているほうが嫌だろう。そういう子だと思ってる。


 最近国内で騒がれていることについて書くよ。


 魔力を持たない子供が産まれてくるようになった。


 どういうことか分かる?


生まれつき魔力をちっとも持たない赤ん坊が、産まれているんだ。


 こちらの世界では、母親の中で命として芽生えた瞬間から、子供には魔力が生じ始める。それがなかったということ。


 一時的なものではなかった。

 産まれてから時間が経過しても、魔力が生じることがないんだ。魔力を見ることができない。それは、保有する魔力がゼロであるということだ。


 一人だけではないよ。

 

 地震が頻繁に起こるようになった頃から、そういった子供の誕生が報告されるようになった。


 モモカちゃんもだ。


 彼女にも、魔力がない。


 これからの成長の中で、魔力が生じていくものなのか、それは分からない。



 もう一点。


 これは全国民に共通することだ。

 消耗した魔力の回復が、鈍くなった。全く回復しない人もいる。個人差があるが、誰もが以前のようなスピードで魔力が回復しなくなっている。


 魔力なしの子供が産まれるようになった現象よりも、こちらの方が騒がれている。当事者となる人が多いからね。全国民が当事者なのだから。


 俺もそう。

 ユウキも。


 だから皆、魔法を極力使わずに生活しているんだ。


 ただ、例外がある。


 ツムグくんだけは、以前と同様に魔力を回復させることができている。

無属性魔力だけが、例外ということらしい。




 進展があれば、また知らせるよ。



アミ


 

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