ユウキから侑子へ⑥
ユーコちゃんへ
あっという間に夏が終わった。
最近は以前のようなスピードで返事を出せずにごめんね。
巡業から央里に帰ってきたと思ったら、一週間といられずすぐにまた巡業へ――こんな感じで、八月と九月は殆ど地方で過ごしていたよ。
今回は一ヶ月丸々央里で過ごせることになって、十一月に入ったらまた巡業。
年末年始はいつも通りジロウさんのところで皆と過ごすけど、帰ってくるのは十二月に入ってからになるかも。
巡業に出る度に、訪れた先の人と仲良くなるんだよ。ライブハウスで働く人はもちろん、地元の歌歌い達や、お客さん。
予想外だったけれど、そんな風に関係が広がっていくことが、すごく刺激的なんだ。
成人して、学生ではなくなって、一応稼ぎもあって一人暮らしもするようになって、漠然と自分の中で人生が一段落したつもりになっていた。
ずっと目標にしていたこと……自分の本当の声で歌うこと、それも叶っているしね。
だけどそうじゃないって、頬を打たれた気がする。
まだまだ先はあって、目指すところや欲しいと思うものは尽きない。
もっと沢山歌いたい。
もっと曲を書きたい。
楽器の技術も磨きたい。
もっと多くの人に、俺の音楽で楽しいって言わせたい。
俺は欲張りかもなぁ。
全部諦めたくないって思ってしまう。
だから、一箇所に留まっていられない。何処かに行けば、まだ知らない気づきを得られるかもって思ってしまうから。
手紙の返事、待たせることになる。
本当にごめん
待たせる分だけ、すごい曲を書くよ。
沢山歌ってくる。
ユーコちゃんに聞かせたい話や見せたい景色を、一つでも多く見つけてくるって約束する。
歌う俺の原動力は、君だよ。
声が聞こえなくても、ユーコちゃんはいつも一緒に歌ってるように感じる。
そう思えるから、もっともっと歌っていたいんだ。
ユウキ
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