見知らぬ街②

 ほっとした途端、思い出したように足に疲労感が甦る。


意識していなかったが、かなりの長時間歩きっぱなしだったのだ。

どこかに腰かけて休憩したい。


座れそうな場所を探し始めた時だった。


 五叉路に差し掛かった時、はす向かいに何か探し物をしているように、辺りをきょろきょろ見回すスーツ姿の男が目に入った。


朔也はスーツを着て出勤するので、男性のスーツ姿は見慣れていたが、その男が身に付けているのは、ビジネススーツよりも少し華美な印象を与える物だった。


 探し物をしているような素振りがなかったら、侑子は気にしなかったかもしれない。


他の人々もさして違いのない服装なのだ。


しかし――


「あ、君。そこの黒髪の」


 ほら、やっぱり。


 嫌な予感は当たるものだ。


特に侑子は、昔からこういう危険察知能力は、高い方だと自負していた。


男が探していたのは自分なのだ。

薄々感じてはいたが、やはり自分はこの場所では異分子なのだ。


きっとさっきの屋敷にいた女が、通報でもしたのだろう。


この街に警察がいるかはわからないが、きっといるだろう。


そういう人に自分は捕まるのか?


悪事を働いた覚えはないが、さっきの屋敷での一連の出来事は、遊色の瞳の女からすれば、不法侵入になるのではないか。


 侑子は痛む足を鼓舞して、再び駆け出していた。

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