第25話 暗い歴史

 その日の侑子の家庭教師は、エイマンだった。


 卒業してそれぞれ就職や進学をしたユウキや彼の幼馴染たちは、新しい生活のペースを掴んでいる途中で、家庭教師として割ける時間が以前よりも減っていた。


その分多く顔を出してくれるようになったのが、エイマンだったのだ。仕事は大丈夫なのかと心配した侑子に対して、彼は笑いながら、時間ならいくらでも融通が利くと答えた。


 勉強部屋としてジロウが整えてくれた部屋には、大きな作業台と勉強机が中央に据えられている。壁際の棚には、侑子のためにと揃えてくれた、学習書や関連資料をまとめた分厚いファイル、地球儀などが並んでいた。


侑子とエイマンは並んで腰掛け、ヒノクニの歴史年表を開いていた。


「今日は暗い話になってしまうけど、とても大切な歴史の話をしよう」

 

 それだけで侑子は、年表のどのあたりの話をするのか予想がついた。


これまでこの国の成り立ちから順を追って習ってきた歴史の話は、日本の歴史と似ている点を度々発見できて興味深かった。元々歴史好きだった侑子は、教科書をあっという間に一通り読破してしまっていた。


その中で気づいたのだが、二つの世界の歴史は、古い時代に遡れば遡るほど共通する点が多く見つかる。

例えば古代の古墳の形や、国宝に指定されている建造物の名称、そして偉人の名前など。


自分がよく知っている単語を見つけては侑子は驚くのだが、共通しているのが名称だけで、実物の写真を見るとまるで別の形をしているので更に驚かされる。偉人にいたっては、同姓同名なだけで関わった出来事は全く違うし、登場する時代もズレていることが少なくない。


 そして時代が進むほど、そのような共通点は少なくなっていき、近代に入ると殆どなくなっていく。全く別の国の歴史を学んでいる感覚だった。

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