閑話 『エマの決断』
私どうしよう……
昨日の夜、いきなりリンクから『雷鳴』が街を出る事について告げられた…
1週間後にモルフィートから出発しちゃうみたいなんだけど、結局私は一夜経っても一緒に旅立つかどうか決められていない…
私はまだお父さんとお母さんから離れたくない…
でも、みんなと会えなくなるのもイヤだ……
本当にどうしよう……
2日が経っても心の整理がついてくれない…
もう!! リンクはなんでこんな急に旅立つ事を決めちゃったのよ!
もう少し時間をくれれば私だって…!!
私だって……いや、ちがうか…
多分私には時間があってもそんな決断どうせ出来なかったよね…
だって私には元々リンク達みたいな勇気無いんだから……
リンクとファルは私たちがまだちっちゃい時に出会った。
だけど、2人はもうあの時から強い心を持っていたような気がする。
私がおままごとやお喋りをしている間、2人は剣の稽古ばっかりしてるような子供だったし……
でも、それは私がおかしいんじゃなくて、あの2人の方が普通と違うっていう事はわかってる。特にリンクは…
あの2人が変だって事はわかってたんだけど、近くで見ていた私からすると逆に私が世界から置いていかれてるような気分だった……
だから祝福で『回復魔法』を与えられた時は、これで2人の助けになれるって凄い喜んだ。
それでも、まだ置いていかれているような気がして、私は必死に戦い以外で役に立てる方法がないか考えた。
その結果、私は『製薬』を手に入れて薬師として2人を助けようと思いついたんだ。
それから私は近所の薬屋さんに通い詰めて、店主をしてる薬師のおばあちゃんに色々教えてもらった。
ポーションを作れるようになれれば、私が戦いの場にいなくても2人を癒す事が出来るから。
それを信じて頑張り続けたから、私は見事『製薬』を手に入れる事が出来たんだと思う。
でも、スキルレベルが低いうちは全然実用的なポーションが作れない。
だから私は、教会や訓練所で『回復魔法』の練習をしながらも『製薬』のスキルを育てる日々を続けた。
私がそんな日々を送っていると、いつの間にかリンクとファルに『クリス』という新しい仲間が出来ていた。
クリスはとんでもないイケメンで、しかも凄い優しい!
でも、やっぱりクリスも2人と同じ種類の人だった…
寄り道をする事も無く、勇気を持って前へとどんどん進んでいくタイプの人。
結局、私はまだまだ仲間外れだった……
そして、3人は『雷鳴』というパーティを組んでさらに先へと進んでいく。
3人が進む道の上を私は一緒に歩けていない……
辛かった…
でも、私は必死に食らいついていった。
3人が成人して正式に冒険者になった時も、3人が一緒に実家を出て暮らし始めた時も。
そして、『オードリーさん』が新しく仲間になった時も……
オードリーさんは、私がいつもお世話になっている薬師のおばあちゃんのお孫さん。
よく一緒にポーションを作ったり、世間話をしたりしていた、とても優しくてお姉ちゃんみたいな存在の人。
そんなオードリーさんがある日、『雷鳴』に会ってみたいと言い出した。
私は大切な人達同士が仲良くなればいいなと思ったから、オードリーさんを3人のお家へ連れていった。
すると話がどんどん進んでいって、結局オードリーさんも『雷鳴』へ入る事となった。
私は嬉しいような、悔しいような、そんな複雑な気持ちを感じた。
でも、結局1番強く感じた感情は『羨ましい』だった……
クリスが仲間になった時には感じなかったのに、オードリーさんの時にそう感じてしまったのは、オードリーさんが私と同じ女の子だったからかもしれない……
オードリーさんは私と同じ女の子なのに戦う事を恐れていないし、戦う為の力も持っている。
そしてなにより、3人と同じ前へ進む強い気持ちを持っているのが羨ましかった…
それは私が欲しいと願っていても、手に入れる事が出来なかった物だから……
結局のところ、私とみんなの違いって目標の高さの違いなのかな……?
みんなは遥か高いところに自分の目標を置いている。
私はそんなみんなの横に立つ事だけが目標になってしまっているから、追いつけど追いつけど置いていかれてしまうんだ……
そうだよ…!
それなら、私もまずは自分の大きな目標を見つけるところから始めなきゃいけない…!!
今までと同じようにみんなの後を追い掛けているだけじゃダメだ!
それなら、私は一度みんなと離れてみて自分と向き合う事から始めよう。
………決めた。私は街に残る!
街に残って自分と向き合いながら、理想の自分を見つけていく事にしよう!
そして、みんなにも負けない高い目標を見つける事が出来たら、その時は私もみんなと合流して一緒に旅をするんだ!!
でも、そうなると旅立つみんなに何かしてあげたいな…
私に出来る事と言ったら『回復魔法』と『製薬』ぐらいだから……
よし!今の私が作れる最高のポーションを餞別として渡す事にしようかな!!
そうと決まれば、早速行動あるのみ!!
そして、私は自分が納得のいくポーションを作り続ける事に集中してしまったせいで、みんなが旅立つ時間ギリギリに見送りに現れる事となってしまった。
でもみんなにはちゃんと自分の意思を伝える事が出来たし、良い餞別を渡せたと思う!
みんなはもう行っちゃったけど、私も落ち込んでなんかいられない!
早速動き出したいけど、まずは何から始めようかな……?
……あっ、そうだ。
リンクみたいにクリスのお家で本を読ませてもらう事って出来ないかな…?
「となると……あの人だ! あの!すいません!」
「…はい? なんでしょうか?」
「違ってたらごめんなさいなんですけど、クリスのお家の人ですか…!?」
「ええ、確かに私はクリス坊っちゃまの御実家で執事をしているカイネルという者ですけど…」
この瞬間、私は新しい人生への一歩目を踏み出したのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
氏名 [エマ・ローリンズ] 年齢 [15歳]
所属国 [ブランデン王国] 職業 [薬師]
スキル
[回復魔法Lv.13] [製薬Lv.16] [採取Lv.1]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます