第17話 口喧嘩は仲良しの証?
三人は、昼食を摂るために街へ繰り出していた。
リベルの目には全くわからないのだが、どうやら二人とも本人だとは思われないように工夫をしているらしい。何がどうなっているかは不明。
「な〜んか嫌なのよねぇ」
「な、なぜですの」
なんでも魔導神おすすめの店があるらしく、今はそこに向かっているのだが、リナは特に理由もなく怪しんでいる。強いて言えば、魔導神が勧めているから。
「それはもう神に対する冒涜では?」
「神を冒涜して何が悪いのよ。この
「……わたくしはマシですの」
事実として碌な神はいないらしい。
「つか、なんで転移とか使わないわけ?あんたにとっちゃ魔法なんて呼吸より簡単でしょうに」
「それはそうですが、全て魔法に頼り切っていては、まるで別のものを極めた人間のようになってしまいますの。ですか」
「ニート」
「言っちゃいけないことを言いましたわね!?これでもきちんと仕事していますのよ!?」
「じゃあ何やってんのよ」
うぐ、となぜか返答に詰まる魔導神。まさか本当にニート?とリナが胡乱な目を、というか新しいおもちゃを見つけた目をしている。
「わ、わたくしは、この国の管理をしていますの」
「でも基本人任せでしょ。あんたらみたいなのが、まともに良い世界を作ろうとしてるとは思えないし」
「……た、たまに、書類が回ってきますわ」
「内容は?」
「……こんなお祭りがあります、とか、今の流行はこんなものです、とか」
「それはもうチラシよ」
「うぐぅ……」
魔導神とリナのパワーバランスが逆転した瞬間だった。
「つ、着きましたの……」
なんだかやつれた魔導神が見上げるのは、富豪たちが好んで使いそうなホテルだった。
昼食だけでホテル?と思ったが、ここのレストランは日中一般開放されるらしい。
「まあ?わたくしは一般ではないので、いつ来ても使えますけども?」
ドヤ顔と共に胸を張れば、リナがやっぱり嫌そうな目をしている。
その視線は、ある程度ゆとりのある中でその存在を主張するように揺れる、リナにはない何かに向けられていた。
「なんなの?当てつけなの?自分のを見せびらかすことで私に屈辱を与えようって魂胆なの?」
「な、なぜあなたがそこまで気にするのかがわたくしにはいまいち理解できませんの……。というよりこっちですの!?こんな立派なホテルをいつでも好きなだけ使える方を妬んでくださいまし!」
魔導神が自分の胸に手を当てて騒いでいる。
本人的に大きさはどうでも良いらしい。
だがそういう態度が、リナにとっては気に食わない。
「そんなの知らないわよ!私だって無駄に貯まった金が有り余ってんだから、高級ホテルの一つや二つ数年くらい住んでたって全く響かないのよ!そんなのよりねえ、絶対成長しないことが確定してるこっちの方が重要に決まってんでしょ!?」
リナが薄い胸を叩いて叫ぶ。
あまり具体的なことを言うと怒られそうなので言葉を濁すが、リナの体格はほぼリベルと変わらない。
そしてリナは自分がサイボーグだから成長しないと主張するが、魔導神はそこに疑問を抱く。
「あなた、体の構造自由なんですから、胸のサイズくらい変えればよろしいのでは?」
「……っ!?」
雷が落ちるエフェクトでもかかりそうな驚き方をする。
その手があったか!という顔をしているが、むしろなぜ今まで気づかなかったのか。
「えーっと、形状変更から……あれ?んん?……マジでさぁ」
嬉々としてどこか虚空へ目をやっていたリナが急に落ち込むものだから、思わずリベルと魔導神は顔を見合わせていた。
「どうしましたの?」
「……なんかね、人間としての体は変えられないみたい。この体になったのが十四歳の時だから……ああもうっ!なんであと数年待ってくんなかったのかしら!?そしたら絶対もっと成長してたのに‼︎」
リナが誰かに文句を言っているが、多分あんまり変わらなかったんじゃないかな、なんて直感で二人は思った。
「なあ、それより早く入らないか?なんかガラス越しにめっちゃ嫌そうな目で見られてるんだ」
「「……すみませんでした」」
多分ホテルのスタッフだろう。入り口で言い争いをしていたせいで迷惑そうな顔でずっとこっちを見ている。
全員で謝り倒して、なんとか事なきを得た。
「……あんたの権限でどうにかなったんじゃないの?」
「……それで納得できるほど人間の感情は簡単ではないですわ。だったら最初から謝った方がまだ許されますの……」
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