カボチャ男と少女のレクイエム

平御塩

プロローグ


 ――――――むかしむかし。それはとてもむかしの、スコットランドに住むある少女のお話です。


 名前はアリシア。ちょっとお転婆で天真爛漫てんしんらんまんな、銀髪の綺麗なショートカットが特徴のどこにでもいる普通の少女です。


 でも彼女は小さい頃から抱えている病気が原因で体がとても弱く、古い町の地主でもあった父親からは後継ぎとして期待もされておらず、継母けいぼは彼女に興味もなく、必要最低限の生活環境と世間体を気にして町のお医者さんに診せるだけでそれ以上に彼女に何かをしてやることなんてありませんでした。


 親の愛情を満足に受けることの出来ない彼女は、そんな悲しい現実に負けないようにと亡くなった実の母親が遺した創作童話や物語に目を通し、空想の世界に浸っていました。


 ですが、彼女はとても辛いことばかり。生まれつきの病気は彼女を弱らせます。


 人間である以上、彼女は近くて遠い空想には生きられません。彼女には遠くて近い寂しい現実だけにしか生きられません。


 ……これはそんな彼女に起きた、彼女だけが知る物語。


 年に一度のハロウィンであった、知られざる御伽噺です。

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