第1話:執務室にて

第1話:執務室にて


 さて、今日も一日覇業に勤しむとするかー。


 私は執務室にいた。

 報告書やら何やらの書類に目を通そうと思ったのだが、

「あー、めんどくさいから、お前呼んどきな」

 私はお付の執務官の一人に命じた。

 執務官は正装こそしていたが、露出した部分もそうでない部分も、包帯ぐるぐる巻き。

 艶やかな黒髪と目だけが見えている。

 スタイルはほっそりスレンダー。ミス魔族にノミネートされたこともある。

「えー、リータ様、ご自分でやらなければダメですよぉー」

 包帯の執務官は、ぶーぶー文句を言う。

 ミイラ族のパトラだ。

 彼女は頭脳明晰で、魔族の中でも優秀な文官である。

「私は疲れてるんだよ。お前、お付の官ならそれぐらいこなしな」

「見事な飛躍ですね、リータ様。どうしたらそんなに飛躍が可能なのか是非とも知りたいです」

「皮肉はよしな」

「まったく、ご自分の仕事でしょうに」

 ぶつぶつ言いながら、パトラは机の上の書類を手に取ろうとした。

 マホガニーばりの机に置かれた書類を取ろうとすると、ちょうど私の目の前を横切る形になる。

 よっと。

 腰を曲げるパトラの体が目に入った。

「しかし、お前、いつ見ても細くて素敵だねえ」

「いやですよ、リータ様。そんな事ばっかり言って」

 パトラは、ちょっと恥ずかしげに私のほうを見る。

「私もそれくらいほっそりしてるといいんだけど」

 パトラの身体を見てると、妬ましさがこみ上げてくる。

「リータ様は十分グラマラスじゃありませんか」

 パトラはその逆で、羨望の眼差しで私を見ている。

 それも知っている。

 だから、ついつい、いじめたくなってくるのさ。

「パトラや、命令じゃ。私の相手をしておくれ」

 目の前の腰に手を置くと、

「リータ様、こんな明るいうちから…あん、もう……」

 パトラはイヤがるそぶりを見せるが、それでも拒絶はしない。


 だって魔族だもーん。

 

 人間どもの常識なんざ、通用しないのさ。

 女同士でも何でもありよ。

 という訳で、白昼堂々、オフィスラブというヤツにしけこみました。

 あ、覇業、なってなかったね。

 ゴミン。

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