子ドラゴンの危機

 クレアは全速力で走った。メロディはどんくさいので後ろからドタドタとついて来る。クレアは森の中に入り、悲痛な鳴き声をあげる動物の元へ急いだ。


 一体何の動物だろうか。鳥にしては鳴き声が大きい、だが哺乳類の鳴き声ではないような気がした。


 クレアは林の中に入ると、ゼェゼェと息を切らしてついて来たメロディを手で制した。口元に人差し指をあてて、静かにと合図する。メロディはコクリとうなずいた。


 クレアとメロディは背の高い草の陰から様子をうかがった。そこには、小さなドラゴンをはがいじめにしている三人のガラの悪そうな男たちがいた。


 ドラゴンハンターだ。クレアは瞬時に思った。ドラゴンハンターとは、希少なドラゴンを捕獲して金持ちに売りさばく者たちの事だ。大人のドラゴンはとてつもない魔力を持っているので、人間が捕獲するのは大変だ。だが幼いドラゴンならば、魔力が弱いため容易に捕獲できてしまうのだ。


 たが、おかしいとクレアは思った。小さなドラゴンは魔力が弱いため、守護者と呼ばれる大人のドラゴンが、片時も離れず側にいるはずだ。捕らわれた子ドラゴンの守護者は一体どこにいるのだろうか。クレアが思案していると、メロディが震える声で言った。


「ね、ねぇクレアちゃん。どうしよう」

「どうしようもこうしようもないでしょ!ドラゴンハンターは重罪よ。あの小さなドラゴンを助けるわ」

「えっ、向こうは男の人か三人もいるよ?あたしたちは二人だし、女だし」

「何言ってるの!私たちは冒険者を目指しているのよ?!あんな奴ら倒せないでどうするの!」

「で、でもさぁ。もうしばらく待てば子ドラゴンの守護者が助けに来るかもしれないよ?」

「もし助けに来なかったら?あの子は捕まって、金持ちに売られちゃうわよ?」

「う、うん」


 クレアは渋るメロディをいっかつして言った。


「しのごの言わない!私が男たちの気をそらすから、メロディは植物ツタ魔法で子ドラゴンの保護」

「わ、わかった」


 メロディは震えながらうなずいた。クレアも一つうなずくと、林から出て叫んだ。


「貴方たち!そのドラゴンを離しなさい!さもないと痛い目にあうわよ!」


 啖呵を切ったクレアに気づいた男たちがニヤニヤといらやらしい笑みを浮かべて言った。


「やぁ可愛いお嬢ちゃん。俺たちを痛めつけるだって?いせいがいいなぁ」

「おじさんたちは悪いドラゴンハンターだよ?お嬢ちゃんに何ができるのかな?」


 クレアは緊張にたかぶる気持ちをしずめるために、ゆっくりと深呼吸した。絶対に子ドラゴンを助ける。そのために小さな頃から水魔法の訓練を積んできたのだ。クレアは両手に水魔法を発生させた。

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