夢の行く末
そうざ
Whereabouts of Dreams
思った通り、Uは深夜の埠頭に姿を現した。少々疲れた面持ちだったが、人懐っこい笑顔は少年時代のままだった。
「やぁ……」
「よぉ……」
たった一言ずつの挨拶が二十年の間隔を一瞬にして縮めた。僕達は、思い切り互いの肩を叩き合い、再会の実現を噛み締めた。
僕の夢――それはマジシャンだった。
「ぶきっちょのお前がまさか本当に夢を叶えるなんて、吃驚してるよ」
Uは我が事のように喜んでくれたが、僕の内心は複雑だった。自他共に認める不器用な僕が、世界を股に掛けて活躍するマジシャンになれた理由――僕は夜空を見上げた。
夢とは、言わば何光年も離れた星が放つ光のようなものだ。今この身を照らす光は
Uがゆっくりと立ち上がった。僕は視線を逸らしたまま問う。
「……もう行くのか?」
「ああ、俺は
Uは、苦笑い混じりに呟いた。
僕達は、昔も今も、そしてこれからも親友であり続ける事を誓い、最後に固い握手を交わした。
「それにしても、俺が国内に潜伏している事がよく分かったな」
Uの当然の疑問に、僕は無言で応えるしかなかった。
次の瞬間、身を潜めていた警官隊が一挙に駆け付けた。逃げようとするUの手を、僕は決して放さなかった。
連行されて行くUが一瞬、色んな感情が
そして、心の中で叫んだ――
警官に敬礼されながら、僕は幻の光を仰ぎ続けた。
夢の行く末 そうざ @so-za
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