ハッピーハロウィン

ぐらにゅー島

「もー、ばかばか!」

「ハッピーハロウィン!だーかーらー、お菓子くれーっ‼︎」

「いやなんで命令形…。」

放課後の帰り道、僕は彼女と一緒に帰っていた。

ちょうどテスト期間だったため、図書館で勉強した後のことだったから、外も暗くなっておばけ達のの時間だ。途中でコンビニでお菓子を買って、夜の公園でお菓子パーティーというわけだ。

「ねね、チョコ食べたい。ちょこっとね!」

彼女は僕に向かって口を開ける。

「あー、はいはい。ほら。」

とりあえず、手元にあったチョコレートを口に放り込んでやる。

「…‼︎ めっちゃ美味しい!特に君の指紋付きなところがね!」

「いや怖。」

僕のツッコミに満足そうにえへへーっと笑うと、彼女はシュワシュワの炭酸飲料をごくごくと飲む。思ったよりも炭酸が強かったようで、ちょっと涙目になってるところがいじらしい。

「…ねね、そのジュース一口ちょーだい?」

よほど喉がシュワシュワしているのだろうか?僕の飲みかけのジュースが欲しいらしい。でも、彼女のこんな可愛いところを見ちゃったら、意地悪したくなるのが男ってものである。

「んん、どうしようかな…。これ僕が好きなジュースだからなぁ。」

「むむ…。お願いお願いっ!ほら、私と間接ちゅーできちゃうチャンスだよ?」

「……。うーん、やっぱダメ。」

ちょっと間接キスもいいなとか思ってしまった。これが単純な男子高校生の思考回路というものだ。いやはや彼女が可愛い。

「…じゃーいいもん!」

ムスーっとした顔で、彼女は再度炭酸飲料をガブ飲みする。まだ炭酸は抜けていなかったようで、半泣きである。

「おっと、こんなところに猫耳があるなー。これ付けてくれたらジュースあげちゃうかもなー。」

ここぞとばかりに僕は鞄から猫耳カチューシャ(税込110円)を取り出す。

そう、僕はせっかくのハロウィンなんだから彼女のコスプレが見たかったのだ!

「……! 可愛い‼︎ つけるつけるーっ!」

パアッと顔を輝かせると彼女はるんるんでカチューシャをつける。

…いや、僕の目に狂いはなかった。ウルトラスーパー可愛い。

「ジュースください!」

「あー、はいはいどーぞ。」

ほいってジュースを投げると、彼女はナイスキャッチ。

「ごくごく。うん、美味しい!特に君との間接ちゅーなところがね!」

なにそれ可愛い。自分で言っておいてちょっと頬を赤らめてるとことか今も猫耳つけっぱなしなとことか。

「………(カシャカシャカシャカシャカシャ)」

「って、え、なんで連写⁉︎」

写真を発明した人は天才だと思う。だって、好きな人の可愛い瞬間を永遠に残せるんだから。

「ああーっ!消して消して!可愛くないからー!」

「いや、これは結婚式で流すから。」

「け、結婚式⁉︎」

はわわーっと言うと、彼女は手を顔の前でジタバタさせる。顔が真っ赤な子猫ちゃんだ。

「ま、まあ、それなら別にいいけd…って、よくなーい!」

ぽこぽこと僕の肩を叩いてくる。ああ、抱きしめちゃいたい。

「もー、じゃあお菓子くれたら許してあげるよ。トリックオアトリート!」

猫耳をつけてるのを思い出したのか、手を丸めてニャンコの真似っこをしたポーズをとる。こんな可愛い猫がこの世に今までいただろうか?

「お菓子は…もう無いよ。」

「え、あるけど…?」

ん?といった顔でコンビニの袋を見つめる彼女。

「じゃ、もっと甘いのあげるよ。」

「え、なになに?」

興味を持ったのか、キラキラした目をこちらに向けてくる。

「じゃ、目を瞑ってて。」

「うん!」

なんの躊躇いもなく、僕に目を閉じた顔を見せる。こんなに無防備だと心配になっちゃうな。全くもう。


とりあえず、彼女の唇は僕が奪うことにした。


いいよな、僕だってハロウィンにお菓子よりも甘いもの貰ったって。

さっきの炭酸飲料がぬるくなった気がした。

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