ヒロインが世界一めんどくさいラブコメ

青井かいか

プロローグ

恋愛はめんどくさい

 『絶対』なんて絶対に無い。だからこそ思って想い、こいねがって恋願う。


 ――その恋が、永遠の絶対でありますように





 思春期――とは、段階的に身体が成熟し、小児から成人へと移行する時期である。


 雑な言葉で括れば、男の子がより男性らしく、女の子がより女性らしくなる時期であり、異性に興味を持って当然の時期と言える。

 多様な現代において色恋事に決まった形などはない訳だが、あくまで多数派という分類で区切るのであれば、生物学的繁殖プロセスに準拠して、男と女が互いを意識し合う以上、そこに色恋沙汰が生れるのは避けられない。


 思春期が一体いつ始まるのか。そこには議論の余地が溢れていそうだが、一説として、二次性徴と思春期は同一視される。 


 二次性徴の開始年齢は、男子で十歳から十三歳くらい、女子では八歳から十二歳くらいである――と、この前ネットで調べたら載っていた。


 女の子の方がませているというのはよく聞く話だが、何も無根拠の感覚論ではなく、そうあって無理からぬ話なのだ。

 そんなおませな女の子に男の子が追い付いて来るのが大体小学四年生という訳であり、この辺りの男子と女子は相当にめんどくさい。


 中高生の恋愛も大分めんどくさいが、小学生の恋愛もかなりめんどくさい。

 要するに恋愛はめんどくさい。異論は認めない。


 多感に溢れて色恋事に関心を持たずにはいられない思春期。


 そんなめんどくさい思春期が始まる小学四年生の頃、俺は一人の女子をキッカケにとんでもない修羅場に巻き込まれ、『恋愛なんてめんどくさい』という持論を持つに至った。

 その持論は、高校二年生になった今に至るまで少しも揺らいでいない。


 ――この世において、〝恋愛〟なんてものだけは、絶対にめんどくさい。


 繰り返す。

 異論は認めない。



「――いっちばん得意なことは、人の恋愛相談に乗ることです! なぜなら私は、恋愛マスターですから♡」



 転校直後の自己紹介で臆面なくそう言い放ち、呆気に取られる皆の視線を浴びながら横ピース満面スマイルを決めた茜咲あかねさき恋夢こゆめ


 俺のトラウマの元凶であるソイツと再会したのは、高校二年生としての生活が始まって二週間も過ぎた頃のことだった。

 俺と彼女を取り巻いて起こる世界一めんどくさいラブコメを語るなら、きっとこの日から始めるべきだ。


 過去に別れた幼なじみの女の子が自分のクラスに転校してきて再会するなんて、いかにも青春ラブコメ(笑)らしいだろう?


 ラブコメなんてものをどうにも好きになれない俺ですらそれが分かるくらい、この世には色恋にまつわる物語が溢れているのだから、俺がどう足掻いても面倒な色恋沙汰から逃れられないのも仕方ない――……のかなぁ。


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