帝冠守護者の黙示録/黙示:フロンティア ~深淵世界の冒険記~
11月光志/月村光志
プロローグ
プロローグ
ギェエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!
その吐き気を
人間の身長を優に超える巨体は、
「うっ!」
唾液が垂れるごとに当たりに漂う強烈な臭い。硫黄のように腐った卵のような腐敗臭でも、
この怪物を何と言えばよいかという質問があれば、植物のような見た目をしていると答えることが一番近い解答になるだろう。
深淵隊という邪神越えの組織と戦ってきたフローレンツも、その怪物の邪悪な見た目に慄き、後ずさりしていた。
その時である。
ギェエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!
再び耳をつんざくような雄たけびを上げた怪物の触手が勢いよくスタンリーらに向かって飛翔した。
文字通り目にも止まらぬ速さで伸びてきた触手は、スタンリー……の真横を通り過ぎると、名を知らぬレジスタンスのメンバーの一人に絡みついて、ジェットコースターのようなスピードでメンバーを連れ去っていった。
一瞬の出来事すぎていまだに誰も理解が追いついていない。理解しがたく、もはや悪夢のようにも思えてくる
メンバーを捕まえた触手は数秒ほど空中でブラブラと右往左往するだけだったが、やがて触手は怪物の大きく開いた口もとへ運び……
そして……
グチャ! という鈍い音とともに、ゴリッ! バキッ! という何かをかみ砕く音。
「……」
まだ、その状況を理解できる人はいなかった。
追って頭の中で今の瞬間に起こった悲劇を整理してみると、未知なる生物に遭遇し、その見た目に恐怖を感じていたら、触手がレジスタンスのメンバーを連れ去って、そして食べた……。
「あぁ……」
全てを理解したとき、もはや気の抜けた間抜けな声しか出なかった。数秒前まで過ごしていた仲間が、目の前で謎の生物に喰われたという事実。もはや現実離れした考えられない異様な光景に、すべて妄想、自身の幻覚だと思い込もうとしていた意識が、引き戻され、
人間が食べ物を食べるときのように、口と思わしき部分は前後左右に動かされ、そのたびにグチャ、ゴリッ、バキッという想像も絶するような音が響き渡る。
「ッ!」
わずか数秒、それもほんの一瞬であった。
だが、スタンリーは確かに見てしまった。
わずかに開いた口の中に、血まみれの白目を向いた部下の顔が……。
胃が爆発してしまうと錯覚する勢いで締め付けられ、喉には胃液が込み上げてくるような不快感が広がる。
だが、それ以上に目の前でたった今起こった事。到底10代の若者が生で目撃して耐えられるような代物ではないが、それ以上に押し寄せてくる“死”への恐怖。人として死ぬのではなく、未知なる怪物に食われて粉砕死する未来が目前まで迫ってきている恐怖心は、すくなくとも凍り付いていた足を動かせるには十分だった。
「逃げろ!」
フローレンツの言葉で、彼らは一斉に走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます