第3-1話 <抵抗する者たち>
配給所。
深淵領の
レジスタンス。それはこの世界において深淵隊やヴィルレヴァンガーに抵抗する市民組織であり、同組織によって運営される配給所は、帝国や騎士団国からの支援物資が
それが都市には複数個所設置され、各配給所で品ぞろえも異なっているそうだ。
ただしお金の概念が機能しない深淵領においては、配給は予約したものを受け取る予約優先制の物品と、配られた切符と物品を交換する切符交換制によって成り立っている。例えば水2リットルボトルが一箱なら切符1枚。レーションや缶詰なら個数1個当たり切符1枚、薬は一箱切符1枚、トイレットペーパーは6ロールで1枚といった交換比率となる。
この日も、入り口の警備員と店主? の二人によって運営される配給所には、スタンリーらが訪れた時にはすでに二人の先客がいた。一人は顔見知りとなっていた年老いた女性、年老いたといったが以前女性と店主の会話を聞いてしまったとき、年齢を偶然知ってしまったのだが、実年齢と比べて若く、何より気品さを感じられる。もう一人は
「っと、こんにちは、パーディット君」
スタンリーの来店に気が付いた店主は、にこやかな笑みを浮かべて話しかけ、スタンリーは慣れた様子で会釈する。ここだけ見ると一見普通のお店にしか見えないのだが、それでもむき出しのパイプや使われなくなった点検部品が放置されている所は
と、にこやかな笑みを浮かべていた店主は、スタンリーの隣にいる人物を認識すると、フッと笑みが消えて、
「おや。これはこれは……」
「よぉ、久しぶりだな」
「こんにちは、お久しぶり、フェルダーハイムさん。無事に生きているようでなによりだね。それで、今日はいったいどのような要件で?」
「ん、いや、俺は彼の付き添いだ」
「付き添い……?」
フローレンツに
「パーディット君の? どうゆうご縁なんですか?」
「いや、なに。ただの護衛だ。ほら、最近この辺りを例の怪物がうろついているっていう話だろ? あれに追われてたんだよ」
「あぁ、アレですか……。アレに追われてよく生きていましたね……」
怪物。それは先ほどスタンリーを追いかけてきた“何か”を指しているのだろう。にしても、何かが割と名の知れたヤバい奴だったのは初めて聞いたが。
「スタンリー君は配給の受け取りだね」
「はい、いつものをもらいに来ました」
「ちょっと待っててな、今とってくるから」
店主は入り組んだ部屋の奥の棚、袋に詰めてまとめられた棚から一つの袋を持ってくる。店主から前回きたときに予約して袋詰めされた食料と水、それと切符1枚を使って乾電池を受け取るとリュックサックの中にしまい込む。
「それで、フェルダーハイムさんは何かご所望で?」
「あぁいや、俺はそこの男に用があってな」
フローレンツが指さしたのは、先ほどまで店主と何やら小話をしており、今は店奥のナイフや包丁が陳列された棚で品定めしていた老紳士然とした男。
どうやらスタンリーらの会話を盗み聞き……というより、狭い室内の関係でほぼ全員に聞こえていたため、指を指された老紳士然とした男はスタンリーらの方を振り向き、
「おや、フローレンツ君じゃないですか。ずいぶん顔を見なかったけど、健康そうで何よりですね」
「お久しぶりです。実は折り入ってお話が……」
チラリと倉庫内を見渡したフローレンツと、ポムと手を打った白い髭の紳士。
「ふむ、そうか。ならいったん外に出ようか」
そういい、フローレンツと白い髭の紳士は鉄扉を開けて外の狭いマンホール下の空間へ消えていく。残されたのはスタンリーと店主、年老いた女性の三人であり、その女性はこちらには
「じゃぁ、次は2週間後……物品はいつものでいいかな、パーディット君」
「はい……あっ、それとトイレットペーパーのセットの予約を……?」
「了解、トイレットペーパーだね」
メモ帳に何やら書き込む、というよりパーディット/二週間後/セット1+トイレットペーパーと記入した。
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